白い部屋。【虹】 (ページ22)

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黄「Aは覚えとらんやろうけど…、俺、教育実習で1回Aに会ってん。」

教育実習…、そうだ、高校三年生の時の、英語の教育実習生。

黄「必死に教科書とにらめっこしながら、俺のこと見つめるAが可愛くて、」

優しく私に触れる中間さん。

黄「…あの時に気持ち伝えてれば、こんな事にならんかったんやろか。」

「中間さん、」

思わず抱きしめると、強く抱き締め返してくる。

黄「今まで傷つけてごめん。…これで最後やから。」

黄「大事に、抱かせて。」

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甘くて、しょっぱいキス。

名残惜しい体温はもう消えて、また新しい熱に上書きされる。

緑「A、なんか元気ないなぁ。」

気付くと智洋が私の顔を覗き込んでいた。

「わっ、びっくりした…。」

今度は額をくっつけられて、熱を計られる。

緑「んー、熱はないなぁ。食欲はある？」

「あ、うん…、大丈夫だよ。心配しないで。」

うまく、笑えているだろうか。

緑「…やっぱりおかしい。なんかあったやろ？言うてみ？」

智洋には隠し事出来ないな、なんて思いながら、この事実をどう隠そうかぐるぐる考える。

緑「…もしかして、誰かと出るん？」

冷たく突き刺さる、智洋の声。

少し、ほんの少し頷いてみる。

緑「嫌や、そんなの嫌や…。なあ誰と出るん？俺じゃあかんの？」

突然すがりつくように腕を掴まれる。

「智洋…、ごめん、もう決めたことだから。」

じっと返事を待つ。

永遠のように長い時間だった。

緑「…じゃあ俺以外の男全員いなくなれば俺を選ぶしかなくなる、よな？」

「と、もひろ…？」

生気を失った響きで紡がれる言葉に嘘偽りはないように思えた。

緑「ちょっとまっててな、」

部屋から出ていこうとする智洋を必死で止める。

こうなっては、やることなんてひとつしかないだろう。

緑「どうしたん？Aも俺と一緒になれて嬉しいやろ？」

何も呼びかけても、都合の良い方にしか解釈されない。

「っ、ごめん、私が間違ってた…。智洋のこと好きだよ、一緒に出よう。」

咄嗟についた嘘だった。

でも、今はそうするしかなかった。

「だからっ、誰も殺しちゃだめ…っ、」

緑「…ほんまに、俺の事好き？」

「っ、好き、だよ…。」

ごめん、智洋。

この約束は守れない。

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