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隣国との終戦パーティも終盤にさしかかり、夜も更けて来た。
互いに戦況も悪く終わるに終われない状況が続いていたところに、私とジョンイン王子が婚約を発表した。
表向きはめでたく、仲良く終わったかのように思われたけれど実際はそんな事はない。
それでもジョンイン王子は私を気に入ってくれているようで、熱のこもった視線を向ける。
JI「姫。」
…ギョンス、何してるんだろう。
無事だと良いんだけど…。
チャニョリオッパが気付いていて、収容所に情報を流していたら…。
考えるだけで恐ろしかった。
JI「姫!どうかされましたか?」
突然肩を揺さぶられ、はっとして意識を集中させると目の前には心配そうな顔をしたジョンイン王子。
「ご、ごめんなさい…。気分が優れなくて。」
JI「ここ最近ずっとこうですよ。少し休憩しますか?今日はお疲れでしょう。」
「いえ、大丈夫です。」
もしギョンスの事を考えていることを誰かにバレたら、今度こそただでは済まされない。
JI「…大丈夫じゃないです。行きましょう。」
ジョンイン王子は私をしっかりと見つめて、手を引いてバルコニーへ連れ出した。
夜の冷たい風が容赦なく肌に突き刺さってとても寒い。
キラキラと輝く星の先頭を切るように眩しく照らす月を見て、思い出すのはあの人だけだった。
黙っていたジョンイン王子が静かに口を開く。
JI「…私は姫の事を一番愛しています。それなのに、姫はまだあの捕虜の事を想っていらっしゃるのですか?」
はっとした。
最低だけれど、ジョンイン王子の気持ちよりもギョンスの安否の方がはるかに心配だった。
だって、絶対にギョンスの情報がバレているし、今だってギョンスが生きているかさえわからないのに。
オッパがジョンイン王子に告げ口をしたのは分かったけれど、これを知っているのが二人だけだとは言いきれない。
「ギョンスは無事なの!?」
思わず大声で叫んでしまった。
ジョンイン王子の腕を掴んで揺さぶって懇願しても、彼は何も言わずに私を見下ろした。
JI「…姫、残念です。」
少し悲しそうだったジョンイン王子の瞳は、いつしか蔑みを含んで容赦なく私に向けられた。
JI「姫はこの国と我が国を脅かす裏切り者だ。捕らえて。」
「え…?」
そっと呟くように言ったジョンイン王子の言葉を皮切りに、部屋から兵士たちがぞろぞろとやって来た。
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ぼぷぴ(プロフ) - 貴方様が書くお話、本当に面白いです…!!今回のギョンスのお話も最高でした…いろんな意味でドキドキが止まりませんでした!!これからも応援しています! (2020年3月24日 16時) (レス) id: eb25947e96 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう。(プロフ) - 1話1話がすごく読み応えがあって面白いです。シウミンさんの物語とスホさんの物語が個人的にすごく好きです。これからも作者さんのペースで更新して頂けるとうれしいです。 (2020年3月17日 3時) (レス) id: 622a208a12 (このIDを非表示/違反報告)
猫わかめ - 今日初めてこの小説を見つけたのですが、とてもハマって一気に読んじゃいました。どれも狂気的で特にセフンくんのは結末に鳥肌がたちました。すごく面白かったです。これからも頑張ってください! (2020年2月27日 1時) (レス) id: d5ef40128c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nel_ | 作成日時:2020年2月2日 1時