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見ているものが全てでは無い。
人は自分の都合の悪いことは見えないようにするから。
彼女もまた、都合の悪いものが視えていなかった。
《閻魔。そろそろ時間よ。呪いを解いて。》
「・・・もうそんなに経つんだな。」
《美命は何がしたいのよ。意味の無いことで足掻いて。閻魔の呪いのせい?》
「呪いは大昔に解いてるし、アイツの意思に呪いは関係ない。ただ、アイツが戻りたくないだけなんだろう。
人に崇められることは自分を縛り付けるものだと知ってしまったからな。」
恐怖というのは生涯纒わり付くもので、簡単に消えるものでは無い。
得体の知れないものも恐怖となる。
彼女の頭に響く謎の声の存在は恐怖となり、尚更戻るのを妨げている。
『閻魔。誰と喋っているの?そこには何も居ないでしょ?』
いつの間に戻ったのか、美命が閻魔に話しかけた。
「・・・見えてるだろ?アンタにも。」
信じられない。と言いたげな表情でそう言う閻魔。
『そこには何も居ないよ?』
美命がそう言うと閻魔は目を見開いた。
「っ、お前、まさか記憶が無いのか...?」
『記憶って何?閻魔は何を知ってるの?私、さっき、
人が此処まで愚かな生き物だとは思わなかったわ。
って勝手に言ってたの。こんなこと言うつもり無かったのに。』
「
『ない。』
即答で答えた美命。
確実に剥がれ落ちてきている美命の仮面。
しかし、仮面は剥がれ落ちては修復されていく。
「知ってるはずだ。つまらない嘘つくな。」
『・・・ごめん、花造蒼天命は知ってる。彼女は私で私じゃない。』
「あぁ、もう1人の
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作者名:果鈴 x他1人 | 作成日時:2020年10月14日 18時