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仕事をする気になれず、術で擬態して現世の街に行った。
今の私は黒髪黒目だ。
『何買おうかな、』
ふと甘味処を見ると、見た事のある顔が見えた。
音柱の宇髄天元様だ。
『すみません、三色団子2本ください。』
「はいよー。」
私はワザと音柱様の近くに座り、三色団子を頼んだ。
音柱様は私が鬼だと気づいたのか、チラチラと私の方を見ている。
「お待ちどうさま。そうだ、アンタこんな噂知ってるかい?
此処の近くにある麗川神社の生き神様が行方不明だそうだ。
そんで、そこの神社の巫女が血眼になって生き神様を探してるんだとよ。
生き神様は何を考えてるんだろうね。」
こんな所にまで噂は広がってるんだ。
『さぁ。神のみぞ知るって言うじゃないですか。』
「それもそうだね」
私は一生巫女から逃げ続けないと駄目なのかな。
すると、甘味処に慌てて来たのか髪もボサボサで、息も荒い巫女が入ってきた。
「そこの銀髪の男性!生き神様を見てない!?この前神社に来てたから...」
「俺は派手に知らねぇ。そこの黒髪の女なら何か知ってんじゃねーか?」
音柱さんは私を指さした。
まぁ、それもそうか。
「君!生き神様を見てない?」
『見てないです。というか、"神様"なら高天原に居るんじゃないですか?』
その発想はなかった。っと言いたげな表情を浮かべる巫女。
『そもそも、生き神様を捕えるなんていう発想がおかしくないですか?私達はあくまで人間。神様より下の立場。
それなのに神様を思い通りにしようなんて横暴にも程があります。』
それは、今まで彼女が心の内に秘めてきた本音のようで
『"巫女"は神様の声を聞く者でしょう?』
巫女への憂さ晴らしのようで
『生き神様なら今頃地獄に居るでしょうね。』
彼女の、
《人が此処まで愚かな生物とは思わなかったわ。》
彼女の全てを変えてしまう言葉だった。
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作者名:果鈴 x他1人 | 作成日時:2020年10月14日 18時