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《Your side》
沢山食べて、沢山買い物をして。
さっきは言えなかったけど、実は買った服はスンミンくんと色違いのパーカー。今日のことを忘れたくなくて、勝手に思い出作りをしちゃった。スンミンくんが緑で、私がクリーム色。いつか言える日が来るといいな。
最後のロケーションへの移動中、バスの中から日が沈み始めた空を眺めて、ああ今日よ、どうか終わってくれるなと考える。
到着したようだったので隣の席を見ると、スンミンくんがうとうとと船を漕いでいた。
とんとん、と肩に手を添えてスンミンくんを起こすと
SM「あれ、僕寝てた…?」
とつぶやき立ち上がる。まだ半分微睡みの中にいるスンミンくんの手を取り、ふにふにと触る。
『…起きた?』
SM「…おきた」
びっくりしたのか、起きてくれたので結果オーライ。
バスを降りて見えたのは大型ショッピングセンターに併設された、大きな観覧車。
SM「あれに乗るよ」
スンミンくんは、私の手を取ってスンミンくんの手と絡めた。突然のことに驚いている私をよそに
SM「さ、行こう」
と手を繋いだまま歩き始めて、遅れて私も駆け寄る。
『スンミンくん、どうしたの』
急に手なんか繋いで。そういったニュアンスで問うと
SM「今日一日、ずっとこうしたかったから。
お願い。最後だからさ、我儘聞いてよ」
と返ってきて、幸福感と同時に最後という言葉が私の心を締め付ける。
観覧車の列に並んでから実際に乗るまでの時間は5分もなくて、すぐ乗れた。
乗ってからも手は繋いだまま、でも二人共口を開かないままで時間が過ぎていく。
SM「ねえ、Aちゃん」
沈黙を破ったのはスンミンくんだった。私の返事を待たず、スンミンくんは話を続ける。
SM「ちゃんと聞いててね。
出会った時のこと覚えてる?僕がたまたま3年の校舎棟に居た時に道にAちゃんが迷ってたじゃん。あの頃はまだ全然心を開いてくれてなかったからだと思うんだけど、結構冷たい感じの女の子なのかなって思ってた。でも、席もお隣になれてさ、たくさん会話を重ねるうちに心を開いてくれるようになったAちゃんが、僕すごく愛おしかったんだ。」
繋がれたスンミンくんの手が、少し震えている。私は強く握り返した。
SM「でも、僕ってほんとに汚くて、そんな愛おしいAちゃんを僕だけのものにしたくなっちゃったの。」
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作者名:でんでんい | 作成日時:2024年1月21日 2時