いちから、じゅうまで (ページ39)

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午前7時。

夏休みとは言っても、いつもと同じ時間に目は覚める。

まだ着ているシワシワになった制服を見て、私が帰ってすぐ寝てしまった事を思い出して溜め息を吐いた。

とりあえずワイシャツは数日分の洗濯物たちと一緒に洗濯機に入れて、ブレザー達はアイロンをかけてやることにした。

暑くてなんだか朝食を食べる気にならなかったけど、健康でいるためには必要だ。

そう、健康でいなくちゃ。だって、スンミニ…スンミンくんといつ遊びに行くかわかんないし

あ

『そうだ、スンミンくんと言えばカトクどうなったんだろ』

朝から一度も開いていないスマホを手に取る。

スンミンくんからはカトクが2件届いていて、一番上の通知バナーは16時間前。しまった、昨日は15時には家にいたのにそこから馬鹿みたいに寝てしまっていたせいで長いあいだ未読放置をしてしまった。

急いでトークを確認すると

승민이ぼくがしたくてしたことだから
気にしないで

などと書かれていて、スンミンくんはどこまで優しいんだろう。みんなにもきっと優しいんだろうな。と、キムスンミンという人間の底知れない寛大さに思わず感服した。

ひとまず、何て返せばいいかがよく分からなかったから既読をつけた手前、無視するような行動はよくないと分かっているけれど、朝ごはんを作ることにした。

SM「僕、卵好きなんだよね。」

記憶の中のスンミンくんがそんな事を言うから、気づいた時には食卓の上にたまごサンドとスクランブルエッグが並んでいた。我ながら影響を受けすぎだと思う。

『仕方ない、恋してるんだから』

そう、これは不可抗力。好きな人の言葉が幾度となく頭を反芻するのも、好きな人から影響を受けまくるのも、全部仕方ない。

私はひとつしかない椅子に座って、出来上がってしまった栄養バランスこそ悪いが情が詰まりきった食事を、もそもそと食べ進めた。

『いつか、スンミンくんにも作ってあげたいな…』

自分で言っておいて耳を疑った。何を言っているんだ。両頬をぱちんと叩き、我に返る。
わたしはスンミンくんのことが好き。だけどスンミンくんは私のことをそういった目で見ていないから。
勘違いするなよ、A。と念押しをする。