いちから、じゅうまで (ページ37)

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《Seungmin side》

夏休み初日の朝。

昨晩アラームをかけずに寝たせいで午前九時に起きた。
平日なら大遅刻だな、と想像以上に優美で自堕落な長期休暇の始まりに僕は自嘲を含んだ笑みを零す。

恐らく母が仕事に行く前に作ったであろう。ダイニングテーブルに出された一人分の少し冷めたご飯をゆっくりと食べ進めていると、リビングのソファに置いてきたスマホから特徴的なメッセージ通知が鳴った。カトクだ。

普段、僕にすすんでカトクを送ってくる人間はイエニとジナ、そして高校は離れてしまったが中学時代から連絡を取りあっているハナと家族くらいだ。リノヒョンは僕から送らない限り何も来ないし。

けれど、昨日からその可能性の中に新しい人間が参入してきた。
僕は箸を進める手を止め、リビングにのそのそと歩いた。

暗くなったスマホの画面を2回タップして明るくしてやると、黄色いアイコンの横に書かれた送信者名はA。

自分の心拍が急激に上がるのを感じた。僕とAのトークは昨日の僕が素直になれないまま止まっていたけれど、Aがそれに新たなメッセージを送ってくれたのだ。

通知バナーを押してトークルームを開くと、可愛らしい犬が「ありがとう！」としっぽを振っているスタンプが。

SM「えぇ、そんなかわいいスタンプ持ってるんだ……」

Aが僕のために何を送ろうか考えて最終的にこの犬になったのかと思うと、抑えようとも口の両端が上がってしまう。

僕はなんて返したらいいか分からないままカトクを数分放置した。ぐるぐる思考を巡らせて、最終的に何日に遊びに行くかを尋ねることにした。

ソウル探訪、いつ行く?
僕は部活さえ無ければいつでも行けるよ

本当は写真部は夏休みに部活なんてないのに送ってみると、送ったと同時にメッセージ横の1が消えて驚いた。

僕が既読つけてからずっとメッセージ見てたのかな………

縮こまってスマホを見ながら僕の返事を待つ想像上のAがあまりにも可愛くて、思わずソファに転がった。