いちから、じゅうまで (ページ36)

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結局僕達は、夏休みソウル巡りをするということで事は落ち着いた。無我夢中で二人の世界に入り込んでいたため、体育祭の種目は勝手に決められていて障害物リレーの中でもパン食い競走に参加したかったのに僕は借り物競争だったし、話を聞いてなかった僕達は先生にみっちり指導された。

終業式も指導も終わって、帰り際にAちゃんが

『終業式だし部活無いでしょ？イエニから聞いた、帰ろ』

なんて言うから、イエニに聞くくらいなら直接僕に聞けよ、と思いつつも一緒に帰れることに喜んで僕は二つ返事で了承した。

帰り道で

『夏休み入ると全然会えなくなっちゃうし細かい予定も決められないから、ほら』

ずい、とスマホの画面を僕に近づけてきたと思ったら、画面にはQRコードが記載されていた。

『カトク。追加してないでしょ？』

突然の出来事に驚いたが、まあ追加しないと不便か。と我に返りスっと読み取りカトクを追加する。

Aとだけ書かれた名前と、黒色のダックスのアイコン。実家で飼ってるらしい。

今日だけでたくさんのことが知れてとても嬉しかった。

『迷惑だろうし、いいよ』

という遠慮も押し切ってアパートまで送っていったからもうお家も覚えた。僕と家とは真逆の方向だし、かなり距離があるけどなんて事ない。

それと、これは僕の中での心変わりで
心の中と、イエニと話す時はAと、呼び捨てで呼んでみることにした。

イエニにそんなつもりは無いと知ってるけど、自己満足の牽制と、少しでも距離を近づけたい、僕だけの秘密。

家に着いていちばんに「今帰ったよ」と連絡を入れたくてスマホを開くと既にカトクから通知が二件届いていた。

Aもうついた?
Aごめんね、遠かったでしょ

僕への気遣いなんていいのに。と思いつつそんな気遣いが嬉しくないわけなくて。

僕がしたくてしたことだから
気にしないで

でも素直に伝えられなくて、つい強がっちゃう。

恋、難しい。