いちから、じゅうまで (ページ30)

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《Seungmin side》

彼女が目を見開いたのはほんの束の間。
口元に弧を浮かべて教卓の方を向いた彼女には、まるで僕が言ったことは全て想定済みであったかのような余裕があった。

『そうだね、私も誘おうと思ってたの。

どこに行こうか？』

Aちゃんはずるい。

僕が持って行ったはずの会話のペースは、何時の間にか彼女のものになっている。

僕は同じクラスだから、Aちゃんがクラスメイトと交流している場面も度々見かける。
だけど、それだからこそ分かる。

『美味しいご飯食べたりとかしたいなぁ。
あれ言ったっけ、私高校生になって初めてソウルに出てきたんだよね。もう一年と少し経ったけど、まだまだ未開の地でさ。ソウル広いじゃん。流石首都。』

Aちゃんが僕以外の人間と話す時、自ら会話を先導することは、滅多にというか絶対、無い。いつも受け身なのに。

『ソウルをよく知るシティーボーイに案内してもらいたいなぁ、どこかに居ないかしら』

その大きな黒の双眸で僕を捉えてるくせに、人を煽るようなことばかり。

僕にしかしてないんだから、本当にずるい

SM「じゃあ、全部やろう

Aちゃんのやりたいこと、全部」

痺れを切らした僕の口から零れた、とんだ無茶ぶり。