膵臓5 ページ5
閉館しているにも関わらず図書室に30分も居座った後俺達は帰宅した。
流石夏と言うべきか、18時を回っているにも関わらず、まだ張り切っている太陽の下で頑張る運動部員の声が聞こえる。
昇降口の硝子張りのドアから差し込む夕陽が眩しい。
俺はバレー部だからロードワーク以外基本外に出ない。
最近は部活すら無く、毎日彼女と書庫の整理をする放課後だった。
理由は2年の先輩が起こした暴力事件。
それも部活内での事だった為、同じ部活の俺たちまでとばっちりを喰らった…という訳だ。
「書庫暑かったー」
「そうだね」
「明日もやるのかー…ま、明後日から休みだしねー」
「そうだね」
「……話聞いてる?」
「聞いてるよ」
ローファーに履き替え、彼女を置いて昇降口を出る。
彼女は爪先をトントンと鳴らしながら、早足で進み、俺の横に並んだ。
「人の話はちゃんと聞くって教わらなかった?」
「教わったよ、ちゃんと聞いてたし」
「んじゃあ、私どんな話してた?」
「……まんじゅ」
「はい聞いてなーい!嘘は駄目!!」
幼稚園生を叱る様に、俺を叱りつける。男子の中でも背が高い俺と、女子の中でも背が低い彼女。
自分よりはるかに低い視線から叱られるのはなかなか新鮮だ。
「ごめんってば、考え事してたんだよ」
「考え事?」
彼女は顰めっ面を嘘の様に晴らし、興味津々、と言った様子でこちらを覗き込んだ。
「そ。ずっと考えてた…俺にしては、真剣に」
「お!何を?」
「君のこと」
歩みを止めず、彼女に見向きもせず、普通の会話になる様に、劇的な雰囲気にならない様に気を付けて言った。
真剣に捉えられても面倒臭いだけだ。
そんな俺の画策も飛び越え、面倒臭いリアクションを取った。
「私?え、愛の告白??きゃー!緊張する!」
「…………違うよ、あのさ」
「ん?」
「残り少ない命を、書庫の片付けなんかに使っていいわけ?」
何気無いこの質問に対し、彼女は首を傾げた。
「良いに決まってるよ」
「決まってはないと思う」
「そう?じゃあ他に何すれば良いの?」
「例えば、初恋の人に愛に行くとか、何処かでヒッチハイクして最期の場所を決めるとか…やりたい事無いの?」
彼女はさっきとは反対の方向に首を傾げる。
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作者名:アニヲタRT | 作成日時:2016年12月6日 19時