▽ ページ9
ー人魚sideー
．
．
あの御方…
智様は、人間をじっと見つめて黙ったままお話を聞いておられました。
「…ここまでは分かった？」
智「うん、分かった」
私の方には一切、目を向けて下さりません。
当たり前のことなのですが
それがとても悲しくて堪らないと同時に、
智様と見つめ合うだなんて、そんな、考えただけで胸が張り裂けてしまいそうです。
なのでほんの少し…、安心します。
．
．
安心…、と云えば
この人間は何者なのでしょう。
こんな妖力の強い人間は、今まで見たきた人間の中でも私達を祓うことの出来る陰陽師と呼ばれる者達。その中でも群を抜いているように思えます。
それなのに、彼等と暮らしているだなんて。
それに、勘違いとはいえ襲いかかった私に対して
こんなにもご親切になさったり…
隣にいる人間を、ちらりと盗み見る。
．
．
「だから、勘違いだったってことで」
智「うんうん」
「この人魚さんは悪い妖怪ではなくてね」
智「うんうん」
「…智、ちゃんと分かってる？」
智「…んふふ」
智ぃ？？と肩を落とす人間。
何故、こんな人間がいるのでしょう。
まるで私を“同等”に見ているかのよう。
何故、そのような事が出来るのでしょう。
同じ妖怪達。
いえ。同種である人魚達ですら恐れられるこの『私』を、まるで友であるかのように真摯になって下さる。
先程尋ねようか迷いました。
ですが、そうですね。
そんな事どうでも良いのかも知れません。
．
．
『あの、智様』
人間は驚いた表情で私を見つめます。
智様が此方を向かれ、目が合いました。
嗚呼、この想いをなんと表せば良いのでしょう。
張り裂けんとばかりにこの胸が痛むのですが、
その痛みの中に歓びが混じっているのです。
深呼吸を、ひとつして
貴方様に微笑みました。
．
．
『長年貴方様を、お慕いしておりました。
私を貴方様の、友にさせて貰えませんか？』
．
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 182人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
maki(プロフ) - とても面白くて、早く続きが見たいです！ (2019年3月12日 20時) (
レス) id: 37744a2c10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：じぇりー | 作成日時：2018年2月12日 16時
