狭間に生きるモノたち肆【ars 妖怪】 (ページ3)

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「あれー？智、今日はここじゃないみたい｣

雅「いないねぇ」

今日は雅紀とトウリさんのところにお礼をしに行った帰りに、翔から智を連れて帰るように頼まれたんだけど…

最近はずっとこの海にいたのになぁ。
ほんとに縄張り広い猫みたい、智って。

雅「んー、じゃあ他んとこ行こっか」

まあ、雅紀が烏に頼んで探せば早いんだろうけど
雅紀は「友達は友達だから、本当に助けてもらいたい時だけ手伝ってもらうの！」って言いそうだし

なんなら烏に頼むっていう発想すらなさそう。

雅｢Aちゃん？｣

夕陽に照らされた雅紀がキラキラ輝いて見える。

雅紀が元気になって、初めてのお出かけだし。
なんなら二人きりも初めてだし。

楽しいから、いっか。

「はーい、いきまーす」

先を歩いていた雅紀に追いつこうと私は
慣れない砂浜を走る。

雅｢もー、コケちゃうよ？｣

｢コケないよ｣

雅｢前に翔ちゃんにお姫様抱っこされて
帰ってきてなかったっけ？｣

｢まさきーーー！！｣

キャー、とかふざけながら雅紀が走り出すから
私もあとを追いかける。

足が速いはずの雅紀と距離が離れないのは
きっと手加減してくれてるからなんだろうけど！

｢捕まえたーー！｣

雅｢つかまったー！｣

｢ぎゃーー!!｣

雅紀の服の裾を掴んだら、
雅紀は嬉しそうに私を抱き上げた。

｢雅紀、下ろして！恥ずかしい！｣

雅｢だってAちゃん、ずるしたでしょ｣

はて、ナンノコトでしょうか。
視線をすこーし外す。

雅｢風の札つかったでしょ。
オレ、風には敏感だから隠してもムダだよ？｣

にかっと笑われたらもう隠しきれない。
雅紀はずるいなぁ。カズも負ける訳だよ。

｢使いました｣って正直に言ったら、｢正直者だから許してしんぜよー｣って下ろしてくれた。