狭間に生きるモノたち肆【ars 妖怪】 (ページ16)

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翔が顔を出した。
私は反射的に顔を逸らした。

逸らしたことが不自然にならないように、
本で顔を隠す。

「翔くん、もう寝てなくて平気？」と潤の心配そうな声に「平気平気！」と明るい声が応える。

翔「さっきも言ったけど、俺が二人を行かせたんだし責任は智くんだけじゃないから。な？」

和「言っときますけど、この人の自由奔放が過ぎるのが今回の事の原因なんですからね!?」

翔「あ、じゃあニノが智くん用の札に追尾機能付けてあげたら？よくね？」

和「はあ!?なんでそんなワタシが…っあーもー!!
翔さんはこの人甘やかしすぎ!!」

…ツッコミが多くてカズがショートしてる。
珍しい。

でも、「え？そうかな」って照れ臭そうに笑う声は、それを狙ってたみたい。
カズは「照れるとこじゃない!!」って怒ってる。

潤「追尾、いいんじゃない？
そうでもしないと連絡つかなさそうだし。
俺も手伝うから付けようか」

潤の追い討ちに、カズは怒るのをやめた。
電池切れみたいに動きが止まる。

うーん。あれだ。
仲間と思っていた人に裏切られちゃったんだ。
「ブルータス、お前もか」ってやつだ。

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カズは、せめてもの反撃に、なのか
翔と智をキッと睨んだ後

諦めたように「分かりましたよ。作りますよ」って
不貞腐れた顔をしながら、ふらふらとおぼつかない足取りで部屋を出ていった。

智と雅紀は、何だかよくわかんないけど助かったーって2人でニコニコしてる。

そんな2人をみて、ふふふっと上品に笑ったあと
翔がこっちを向いた。

声をかけようとしていることに気がついた私は
急いで本を閉じて、飛び起きた。

潤と目が合う。

「潤！」

私は潤の傍にいき、手を握る。
潤がギョッとした表情で私の顔を見た。

「ちょっと、相談したいことがあるの。」

潤「えっ、なに？」

首を傾げる潤。

もちろん、その不思議そうにしている理由が
私の相談したいことの内容だけじゃないことに
気がついてる。

だけど

「私の部屋で。いい？」

潤「…まぁ、Aがいいなら」

「ありがと！じゃあ、行こっ！」

潤が不思議そうにしていることに
気付かないふりをして

翔がわたしに声をかけようとしていたことに
気づかなかったふりをして

潤の手を引き、部屋をでた。