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「_____!! 」
ハッと目を覚ます。ここはどこだ。
飛び起き、暖かな陽射しに目を細める。
どうやら自分は眠っていたらしい。眠気が酷く、傍にあった木に寄りかかる。
「あぁ、やっと目覚めました?」
その声に、何故か胸が苦しくなった。
勢いよく振り返れば、目が合ったAが微笑んだ。
「………A」
「とてもぐっすり眠っていましたね。夢でも見ましたか? 」
そう言いながら身体の前に回り込んでくる。立ち上がったままで、逆光にAの顔が暗くなる。
そうか。夢だ。何か夢を見ていたんだ。
「………………」
「杏寿郎?」
こてんと首を傾げるA。微動だにしない煉獄に、笑みを深めた。
「まあ、夢の話は改めてするとして。そろそろ行きましょうか」
煉獄は顔を上げた。
「__ッ、どこへ? 」
Aが手を伸ばしてくる。
顔が、逆光で見えない。
「ほら、急いで 」
一向に手を掴まない煉獄に、Aはさらに手を伸ばした。
「杏寿郎」
その瞬間、煉獄は勢いよく手を振り払った。
パシッ__と乾いた音が響く。
逆光のはずなのに、何故か酷く傷ついた表情のAが見えた。
生温かい液体が頬に飛び散る。
拭えば、それは赤く。
「_____ッ!! 」
目の前で崩れ落ちる身体、見開かれたまま、こちらを見ているのに視線が合わない瞳、広がる鮮血。
血溜まりが足に触れた。
ヒュッと喉がなる。
震える手を伸ばした。
その2人に影がかかる。
「お前は……」
見えない。顔が。
誰だ。待て、Aを。
その人物はAの身体を抱え、踵を返した。
だらりと垂れた腕、その手の爪が、鋭く長くて。
身体が凍りついたように動かない。喉も、声が。
駄目だ。待て。
無理矢理に動こうとすると、ピシリと音が響いた。
鬱陶しくも視線を向ければ、足先から徐々に氷が広がっていた。
視線を戻す。
遠ざかっていく。2人が。Aが。
駄目だ。
やめてくれ
置いていくな
A……
.
「_____A!! 」
煉獄は飛び起きた。
呼吸こそ荒いが、動ける。声も出る。
「A……
…………………?」
部屋は暗かった。月明かりが僅かに入ってくるばかりで、明かりはついていない。
部屋は変わっていない。確か、奥の壁に拘束されていた。
その、Aが。
「…………いない」
Aは、忽然と姿を消していた。
まるで、悪夢が現実になったように。
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いおり(プロフ) - とってもドキドキして、続きが気になりまくりです……!!更新楽しみにしてます! (2022年12月12日 19時) (レス) @page30 id: c0ee6ff83c (このIDを非表示/違反報告)
シエルくん。 - めちゃ面白かった!! (2022年11月28日 19時) (レス) @page30 id: 82384aca28 (このIDを非表示/違反報告)
ドングリ - 続きが気になるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ(ΦωΦ) (2021年7月10日 15時) (レス) id: 0adc01732d (このIDを非表示/違反報告)
猫の恩返し(プロフ) - ほう、、、覚悟はいいですか?(黒笑) (2021年5月23日 0時) (レス) id: 3ce4a98013 (このIDを非表示/違反報告)
皐月蒼&夜/夜月(プロフ) - らんかさん» コメントありがとうございます!!本日更新させて頂きましたので、是非お楽しみください〜! (2021年2月9日 11時) (レス) id: 1190da7c8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜月 | 作成日時:2021年1月3日 0時