7音目 ページ9
宇髄side
Aは、耳が良い。
この前なんか家の中に居たのに外で嫁が落とした金の金額までピタリと言い当てやがった。
何でも、硬貨一つ一つ重さが違うから音が違うとか。
俺にはそこまでわかんねえよ。
あいつは、昔は物凄い泣き虫だった。
そりゃあもうド派手に泣き喚いて、任務に行けば鬼には気付かれるわ本人それどころじゃないわで大騒ぎだ。
それでもいつの間にかぱたりと泣くのをやめた。
確か、1人で下弦の鬼と戦う任務に行った頃だったはずだ。
俺1人で下弦の相手とか死んじゃうだの大泣きして行ったのに、帰りには何も無かったかのように落ち着いていた。
正直な話、生きて帰ってくる保証はどこにもなかった。
それなのに怪我ひとつ負わずに返り血を浴びて真っ赤になって帰ってきたのには嫁も含め大騒ぎだった。
明らかに変わったのはその後の任務からだ。
取り乱して帰ってきて理由を聞けば、
『目の前で仲間が死んだ』
落ち着かせて、これからはそういう事も増える。と教えたら疲れたのかそのまま寝てしまった。
次の日から、Aは急に言い出した。
『俺もお師さんみたいな派手なやつがいい』
今まではそんな派手でよく平気だなとか憐れんだような目で見ていたのに急に言い出したのだ。
だから俺と色違いの額当てをやったら喜んで直ぐに着け始めた。
何か隠している。
俺は直ぐに分かった。
当然だ。弟子にしてから何年も一緒にいる。
ある日、用事があるとかいって出掛けたからその場所を聞いた。
その後の任務の時にその町を訪れたら、偶然会った爺さんが言ってきたのだ。
「その後、目はどんなだ?」
俺は直ぐに話を聞いた。
目が見えなくなったと言って医者に診てもらったらしい。
俺とAの見た目が似ていたから間違えた、と言っていた。
____俺には秘密にしろ、と言っていた事も。
当然、家に戻って問い質すつもりだったが、家に帰ってその町に任務に行った事を伝えたら直ぐに話を切り上げられた。
俺には知られたくないのかもしれない。
そう思い、気付かないふりをして今まで過ごして来た。
俺は、Aの傷付く顔を見たくなかった。
でもよ、A。
俺は師範なんだから、もう少しお前に頼られたかった。
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作者名:夜月 | 作成日時:2020年5月15日 1時