10音目 ページ12
『おっ、美味いなこの桜餅』
「ほんとね!すっごく美味しい……!」
そう言いながら凄まじい速さで桜餅を食べ進める蜜璃を俺は眺める。
その視線に気づいたのか蜜璃は顔を真っ赤にしてこちらを見た。
「やだ!ごめんなさい、私…はしたないわね……」
その言葉に伊黒がこちらを睨む。
「おい、お前。甘露寺に謝らせるな」
俺は首を横に振った。
『いやいや。しっかりよく食べるってのは派手に良い事だろ。
蜜璃は派手に可愛いしな』
最後の一言に更に伊黒に睨まれるが俺は全く気にしなかった。
団子がうず高く積まれた皿を伊黒に押し出す。
『ほら、伊黒も食え』
「要らん」
『食え』
「要らん」
『食え』
___同じ事を繰り返しながらも俺は団子を食い続ける為、あっという間に団子は減っていく。
その光景を見ていた蜜璃は「仲が良いのね……素敵!」とニコニコ笑顔で桜餅を食べ続けていた。
団子が残り10本となり、俺は伊黒にそっと耳打ちする。
『伊黒さん…何も食べないのね……私、沢山食べる殿方のほうがいいわ!』
その声は蜜璃に似せてある。
お師さんの言う忍びとしての技術の延長で独学で身に付けた能力である。
蜜璃とは先程から会話をして声を覚えたため、実践した、という事だ。
『………なーんて言われたら、とか思わねえ?』
「くっ………!」
伊黒は顔をしかめた。
蜜璃はそんなことを言う性格ではないが……かなり効いたらしい。
『ほら、伊黒も食えって』
「し、仕方ない。そこまで言うなら」
そう言って伊黒は団子を食べ始めた。
それを見た蜜璃は「Aさん優しいのね!」と言っていた。
完全に逆効果である。
『伊黒も派手に食べれるんじゃねえか』
そう分かりやすく言えば蜜璃も「ほんとね!」と微笑んだ。
全て食べ終わった伊黒はややげっそりとしていたが蜜璃の笑顔を見て満足気だった。
『すみません、会計を…』
店員に声を掛け伝票を受け取る。
伝票を覗いた蜜璃は慌てた顔をした。
「やだ!沢山食べ過ぎちゃったわね……」
そう言って財布を取り出そうとする手を俺は抑えた。
『いいって。俺が派手に奢るって言っただろ?』
これまでの給料を貯めていた俺はあまり金には困っていない。
家計はお師さんの給料から出ているから俺は自由に使っていい、と言われていた。
俺が会計する姿を見て蜜璃が「かっこいいわ!」と言っていたのは伊黒の視線がやばかったから反応しないようにした。
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作者名:夜月 | 作成日時:2020年5月15日 1時