初恋 (木村柾哉) (ページ34)

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『痛い？』

「ちょっと、」

一年だから、という理由で京介を保健室へ連れてきたのは私。

そして、またしても先生がいない。

放課後はあまり保健室に来ないのかな？

『先生呼ぶ？』

「いや、いい。Aがやって」

『うん。』

膝に球が当たったようで、赤く腫れていた。

『腫れ、引かなかったら病院行きなよ。』

「うん」

「『あの』」

『あ、どうぞ』

「いや、いいよ」

『なに、早く言ってよ』

「そっちが言えよ」

『ふふ、なんなの、笑』

「こっちのセリフな笑」

『昨日は、ごめん。』

「うん、俺も、ごめん。」

『嬉しかった。京介が真剣に考えてくれてて。

でも自分のことで精一杯で、

京介の気持ち何も考えずに、ほんとごめん。』

「おれも、あんな事言ってごめん」

"振られちまえよ" なんて今考えれば腹が立つけど。

それが1番楽なのかもって、納得してしまった自分がいた。

『傷ついた。』

「だよな、ほんと、ごめん。」

『でも、その通りだなって思った。

返事も聞かず逃げてきたからさ。昨日は。だから

木村先輩に振られたら、吹っ切れるのかも、

とか思っちゃった。』

なんて会話をしながらも、我ながらよくできた

テーピングに、思わず頬が緩む。

『出来たよ』

「...」

『戻ろう。みんな心配してるから。』

「...」

でも京介は保健室のソファーに座ったまま動こうとしない。

ただ、床を見つめているだけ。

『早く。

あ、立てないのか、ごめん

肩貸してあげるから。頑張って歩こ？』

"はい" と手を差し出してみたものの。

なにかが、違うらしい。

よく見る気に食わない顔をしている。

『あ、もしかしておんぶがいい？

いいよ？

京介細いし、軽いし。』

と、京介に近づいてしゃがんだ時。

『っ、わ、』

突然腕を引かれ、気づけば京介の腕の中。

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