初恋 (木村柾哉) (ページ21)

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『あ、えっと、先生にこれ持って行けって頼まれて。』

「あ、そうなの。じゃあ貰うよ？重いでしょ！」

『どうも』

木村先輩の優しさが、また私を揺るがす。

早く、戻らなきゃいけない。

閉まったはずの好きという気持ちが溢れる前に。

『じゃあ、失礼します。西さんも、さよなら！』

(パシッ)

クラスに戻ろうとして、木村先輩に背を向けた時、腕を掴まれた。

誰かと思い振り返ると、腕を掴んだのは木村先輩で。

『えっと、』

「古屋さん、体調悪い？」

『え？』

「昨日会った時も、元気なさそうだったから。」

体調が悪いわけじゃない、けど。

元気はない。

『全然、平気なので、手を、離していただいて、』

掴まれたところが、熱くて、ドキドキして、周りの視線が痛くて。木村先輩の手を掴み引き剥がそうとした。

「じゃあ、なんで洸人とは話すのに俺の事は避けるの。

それ教えてくれたら離してあげる」

木村先輩はそういい、先ほどより強く掴まれて痛い。

彼女がいるから、避ける。当たり前のことをしているだけ。

『だって、木村先輩彼女いるから、』

「え？」

自分で言っておいて悲しくなって。

木村先輩から顔を逸らした先に立っていたのは

『、...っ、』

目を見開き、驚いた顔をして、でも鋭く私を見つめる木村先輩の彼女さん。

言われなくてもわかる、"私の彼氏から離れろ" という表情。

『っ...、ごめんなさい！』

私は木村先輩の腕を振り払い、自分の教室へと走った。

「古屋ちゃんまって、！」

なんて西さんの声すら届くことなく。ただひたすら走った。

さっきのごめんなさいは、誰に向けてだったんだろう。

彼女さんに向けた、"木村先輩と話してごめんなさい"

なのか、

木村先輩に向けた

"彼女さんがいるのに、やっぱりまだ好きです。ごめんなさい"

なのか。

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