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「何でお前にそんなこと言われなきゃなんねーの?」
「この子、朝すっごいどんよりしてたの。蘭が自分のことからかってるんだと思ってるのよ。証拠だってあるわ」
そう言って小さな黒い機械から流された朝の私の叫びに思わず咽せた。いや確かに本心だけれども流石に本人に言うつもりは無かったことをこんな形で暴露されるとは思ってもいなかった。
録音機を私の声録音するためだけに使うなんてちょっと損してるなぁと遠い目をする。音声を聞いた灰谷蘭は無表情で、間近で見るその顔に、額に汗が浮かんだ。
「…からかってるって思ってんの?」
「えっと、…そうです」
「ほらね!ねぇ蘭、その子に弁当作るより私達とご飯食べに行かない?」
よくぞ言ってくれた、と叫びそうになるのを耐える。流石にこの状況で弁当を食べ進めるなんて出来ず、箸を置いて灰谷蘭と彼女の恋の駆け引きもどきを見守ることにした。
灰谷蘭が彼女の言葉になんて返すのかとドキドキして待っていると灰谷蘭は箸を持ち直して卵焼きを掴み私の口元に無理矢理押し付けてきた。突然の事に驚いて開いた口に卵焼きがねじ込まれる。だしが効いててとても美味しい、焼き加減も抜群だ。卵焼きを食べ終えれば今度は煮物を口に詰め込まれる。
次々に口に入れられるおかずにストップをかければ何故か泣きそうな顔をした灰谷蘭に睨まれた。
「美味いんでしょ」
「は、はい」
「もっと食べたいと思うでしょ」
「ま、まぁ少しは?」
「…からかってなんかないから。俺は、Aちゃんにご飯作りたくて作ってんの」
涙目で強めにそう言われてしまったら、もう作ってこないでほしいなんて言えなくなった。落ち込んだような表情が不良要素なんて微塵も感じさせなくて、寧ろ捨てられた子犬みたいな感じで罪悪感を感じてしまう。
けれど彼女は私の為に灰谷蘭がわざわざ弁当を作っていることが気に障ったのか、私の食べかけの弁当を手に取り地面に落とした。
「これでもう昼は何も食べられないわよ!ねぇ蘭、こんな子に作るぐらいなら私に作ってよ。お金だって払うし、お金で満足しないなら私の身体で払ってもいいから…!!」
急に生々しいことを言い始める彼女に、先程までの良い女感がなくなった。材料を無駄にするなんて悪い女だ。鯖に謝ってほしい。落とされてぐちゃぐちゃになった中身は置いといて、まずは弁当を拾った。
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koko0116(プロフ) - 違う作品の話になって申し訳ないのですが、大大大大大大大大大大大好きのパスワードを教えてください! (2022年5月18日 16時) (レス) id: e2066d5feb (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - はじめまして。きゅんな部分とギャグな部分が絶妙に組み込まれていて読んでいてとても楽しいです!続きを楽しみにしています☆ (2022年1月11日 16時) (レス) id: 0343b2f4d3 (このIDを非表示/違反報告)
muu(プロフ) - コナミさん» コメントありがとうございます。面白いと言って頂けて光栄です!更新は遅れますが必ず致しますのでお待ち頂けると嬉しいです。 (2022年1月6日 17時) (レス) id: d72e1585a0 (このIDを非表示/違反報告)
muu(プロフ) - 鼎さん» コメントありがとうございます。私自身ももう少し改行した方がいいと思っているのですが文字数に制限がありますので今よりも改行を増やすことが出来ないんです。これからは改行について考えて更新致します。意見ありがとうございました! (2022年1月6日 17時) (レス) id: d72e1585a0 (このIDを非表示/違反報告)
コナミ - めっちゃ面白かったです!続きが楽しみすぎてヤバイです❗ (2022年1月4日 0時) (レス) @page9 id: 8a999d1026 (このIDを非表示/違反報告)
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