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「す、すごい!」
「すごくないから。ほら、早く残りの野菜切って」
「は、はい!」


血塗れの手と板を水で流し綺麗に剥かれたジャガイモを切ろうとした時、ジャガイモを押さえるために置いた指に包丁の先が当たって血が出てきた。気にせず続けようとすれば灰谷蘭が焦ったように私の手首を掴んだ。


「…もういいから、俺がやるから手当てしてきて」
「えっ、でもこのくらい、」
「いいから。俺が切った方が早いし」


真剣な表情で言われてしまっては私も引き下がるしかない。引かなければきっと骨折られて無理矢理保健室連れていかれるんだろう。優しいのか鬼なのか。家庭の先生に手怪我しましたと両手を見せれば顔面蒼白で家庭科室にある救急箱を使って手当てされた。

そこまで自分が不器用だと思っていなかったので、ジャガイモすら切れなかったことに軽くショックを受けながら自分のグループに席に戻れば、委員長や山田くんを放置して灰谷蘭が鍋を掻き混ぜていた。
委員長によって皿に盛り付けられた完成したカレーを前に手を合わせていただきますと言いスプーンを持つ。


「そうだ。灰谷くん、切るの変わってくれてありがとうございます」
「あれで切るの任せる方がヤバいから。アンタ昼いつもどうしてんの?あれじゃ弁当作れなくない?」
「いつもコンビニの弁当ですよ」


そう答えれば、あり得ないといった表情をされる。コンビニ弁当は冷たくても美味しいのだから別に良いだろう。寧ろ買っておいて不味いと文句を言う方が失礼な気がするんだが。
今更だが灰谷蘭と普通に会話してしまったことに気付いて、ヤバいとカレーを口の中に次々と放り込んだ。目をつけられたかもしれない。先程のジャガイモの皮剥きを見たところ灰谷蘭は絶対料理上手だ。料理ができない私を鬱陶しいと思ってしまったかもしれない。

灰谷蘭と彼に恋するガチ恋女達に虐められる未来を想像し、口の中に入っているカレーを吐き出しそうになる。いけない。もしかしたら灰谷蘭は明日になれば私のことを忘れているかもしれないのにそんなこと想像してしまうなんて。
カレーを無心で食べ続け、お腹いっぱいになって今日の出来事を忘れようとお皿を持って立ち上がった時、灰谷蘭が持っていたスプーンを皿の上に置いて頬杖をつき私に微笑んだ。



「明日から毎日俺が弁当作ってあげる」

「………エッ?」

◯→←◯



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koko0116(プロフ) - 違う作品の話になって申し訳ないのですが、大大大大大大大大大大大好きのパスワードを教えてください! (2022年5月18日 16時) (レス) id: e2066d5feb (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - はじめまして。きゅんな部分とギャグな部分が絶妙に組み込まれていて読んでいてとても楽しいです!続きを楽しみにしています☆ (2022年1月11日 16時) (レス) id: 0343b2f4d3 (このIDを非表示/違反報告)
muu(プロフ) - コナミさん» コメントありがとうございます。面白いと言って頂けて光栄です!更新は遅れますが必ず致しますのでお待ち頂けると嬉しいです。 (2022年1月6日 17時) (レス) id: d72e1585a0 (このIDを非表示/違反報告)
muu(プロフ) - 鼎さん» コメントありがとうございます。私自身ももう少し改行した方がいいと思っているのですが文字数に制限がありますので今よりも改行を増やすことが出来ないんです。これからは改行について考えて更新致します。意見ありがとうございました! (2022年1月6日 17時) (レス) id: d72e1585a0 (このIDを非表示/違反報告)
コナミ - めっちゃ面白かったです!続きが楽しみすぎてヤバイです❗ (2022年1月4日 0時) (レス) @page9 id: 8a999d1026 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:muu | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2021年12月28日 20時

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