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「昼ご飯は教室でってセンセーに言われてなかったっけー?」
「つーかどんだけ食うのよ、笑っちゃうんだけど」
見るからにギャルな女三人のうちの一人が彼女の頭にペットボトルのお茶をかけながら笑う。それを見てもう一人は笑い、残りの一人は誰かの机を漁っていた。女が机の中から見覚えのある封筒を取り出す。何これ、と紐を鋏で切り、中身を取り出した。
「え、何これ漫画?」
「A、アンタもしかしてオタクってヤツ?」
「うわ、これ恋愛モノじゃない?こんなん必死に描いてるとかヤバ!」
制服のポケットからライターを取り出した女が原稿用紙に火をつけた。その時、原稿用紙についた火をかき消すように水がかけられる。当然水は原稿用紙を持っていた女にもかかり、一瞬固まった女は誰よあたしに水かけたの、と怒鳴り声を上げた。
「俺だけど」
「よくも、ぁ、」
ペットボトルからポタポタと水を垂らし笑みを浮かべて前に出てきた男を見て女は怒りで赤くした顔を真っ青に染めた。
蘭は本当はこの出来事を見て見ぬふりをしようとしていた。例え知り合いである彼女が虐められていても、助けてしまえばそこで関係が変わると思っていたからだ。でも、もし彼女が放課後の漫画の作者で、現在進行形でその漫画を燃やされているなら話は別だった。
灰谷蘭にも少しは思いやりという心が存在する。弟は血を分けた実の弟だから可愛がるし、自分たちの王である男やその仲間に対しても尊敬、信頼はしている。
そんな不良というイカれた世界で築かれた関係とは違う、ほんの少し甘酸っぱいような放課後、漫画を通しての関係に蘭は溺れかけていた。
彼女が漫画に手をかけられたせいで漫画の続きを描かなくなるのはごめんだと蘭はその気持ちで動いたけれど、実は本心はそうではなかったのかもしれない。だって漫画の続きが気になるだけなら、こんなに苛立つことなんてないだろうから。
「な、なんで邪魔するの?アンタが普段他の奴らにやってる事なのに、」
「俺虐めとかそんなつまんねー事しねぇよ」
「蘭、その子庇う必要なんてないんだよ?どうせ生きてても虐められるだけの人生の子なんて庇うだけ無駄だし。それより今からデートしようよ、身体の相性も良かったじゃんウチら!」
水をかけられたことで怯える女とは別の女が蘭の腕に自分の身体を押し付ける。そんな女を見ることもなく、蘭は端の方だけ焼かれた跡が残る原稿用紙を抱き締めて震える彼女を見つめた。
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muu(プロフ) - うちださん» 返信遅れて申し訳ありません。コメントありがとうございます。更新出来ず申し訳ないです。忙しさとこの先のストーリーが思い浮かばず止まってしまっていますのでもう少しお待ち頂けると嬉しいです。小説を沢山読むと文章の作りを理解できる様になりますよ! (2022年1月6日 17時) (レス) id: d72e1585a0 (このIDを非表示/違反報告)
うちだ - 続きを待たせていただきます!(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆文才を分けて欲しいです...! (2021年12月31日 14時) (レス) @page14 id: 58c5bf56bc (このIDを非表示/違反報告)
muu(プロフ) - nanaさん» コメントありがとうございます。更新遅れて申し訳ないです。好きと言っていただけて光栄です!ありがとうございます!頑張ります! (2021年12月25日 20時) (レス) id: d72e1585a0 (このIDを非表示/違反報告)
nana(プロフ) - 語彙力なくて上手く伝えられないけどすごく好きです!頑張って下さい!応援してます!! (2021年12月25日 4時) (レス) @page10 id: 7f38ffe42c (このIDを非表示/違反報告)
muu(プロフ) - みなみさん» コメントありがとうございます。気が向いたら書いてみます! (2021年12月20日 20時) (レス) id: d72e1585a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:muu | 作成日時:2021年12月17日 20時