少女漫画にハマった灰谷くん【灰谷蘭】

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今日は何となく機嫌が良かった。明らかに自分目当てな女や弱い雑魚共に絡まれることが無かったからかもしれない。

滅多に登校しない学校に放課後足を運んだ。どうして学校だったのかとか聞かれても自分でも分からないのだから答えようがない。本当にただなんとなく、学校に来ただけだった。
自分の教室に入り、教壇の上に置かれている座席表を見ながら自分の席を確認し椅子を引いて座る。窓から夕日が差し込み、赤く染まる教室に自分一人だけがいることがなんだか心地良かった。

暫くぼーっと椅子に座っていたが、ふと自分の前の机の中にA4サイズくらいの厚みのある封筒が入っている事に気付く。
道徳なんてもの知りもしないし知っていても無視をするだろうこの男は、立ち上がって前の机の中から封筒を取り出した。

宛先が書いてある訳でもないが、封筒の開け口には二つボタンがついており、紐で固く結ばれていた。まるでドラマで見た小説家が執筆した用紙をまとめているみたいな封筒に、少し胸が熱くなった。
そっと紐をボタンから外し、封筒を開けて中の物を取り出す。その中身を見て蘭は目を丸くした。


「………漫画？」


封筒の中に入っていたのはコマ割りされ絵が描かれている用紙の束だった。読む事はせずパラパラと少しだけ他の用紙を見るが、どうやら完成したページだけが入っていたみたいだ。
モノクロで描かれた絵に、グレーのシールのような物が貼ってあったり、付箋に第一話、第二話と書かれてたりして本格的だなと感心する。

ペン入れはしてあるがキャラクターの台詞部分が鉛筆で書かれているのは後でデジタルで入力するからだろうか。あまりこの手のものの知識がない蘭は漫画に少し興味を持った。そして勝手に読み始めた。

漫画を勝手に読む事数分。元々封筒に入っていた枚数が二百枚程度だったので、一話に約二十から三十枚ほど紙を使っていたのだとしても七、八話辺りまでしかなかったので直ぐに読み終えてしまった。
しかも内容は少女漫画。いや、少女漫画と言っていい内容かどうかは判断出来ないが、恋愛要素が強そうな為おそらく少女漫画だろう。

話の内容は有名な赤ずきんの話を題材としたものだった。主人公は二人。赤ずきんの孫と狼の孫の話だった。滅多に見かけない内容だった事と、この持ち主のイラストや描写、コマ割りに蘭は見事にハマってしまった。

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