164話 ページ21
「あの…、すみません。弟達の面倒を見なければいけなくて。また、誘ってください」
罪悪感がじわりと心に滲む。ホッ。隣にいるギョンスが息を吐き出し、頭を下げる僕と一緒にミノさんに向かって軽く頭を下げた。
「…、……そうか。…そうだったな。悪い。なぁ…A…弟…たち、って、誰？その子だけじゃなくて？」
頭を上げてから、苦笑いを浮かべ頭を掻くミノさんに、ビクリと体が震える。…しまった。
「あ、え、えっと…最近犬を飼い始めて…弟みたいに可愛くて…ははは」
「犬…？」
「Aヒョンは、犬が好きなんです。知らないんですか？」
焦って文法が分からなくなった僕に、片眉をぴくりと吊り上げるミノさん。そんな僕たちを見て、やけにムスッとした無愛想な表情をしたギョンスが落ち着いた声音で、突然会話に割り込んできた。
「キャンキャンと吠える銀茶色の犬よりも、ワンワンと吠える図体の大きな犬よりも、黒くて小さい、瞳の大きなウンともすんとも言わない犬を、Aヒョンは愛情深く可愛がってくれるんです。」
「……Aが、愛情深く…」
「えぇ。嫌なことを忘れさせてくれる…立ち向かう勇気をくれるぐらい。…ヒョン、行きましょう。…餌をあげないといけませんから。あの、うるさいベッ…二匹に。」
「あ、あぁ、」
無表情のギョンスに頷き、ミノさんに解釈をして足を一歩踏み出せば、がしり。握り潰されそうなぐらいの力で腕を掴まれ、僕は目を見開きミノさんを見る。
「…、……。ダメな、きがする」
「え？」
ぼそり。低い声でそう呟いたミノさんは、ボゥッと思考を何処かへ飛ばした、濁った瞳に僕を映す。
どくり。僕の心臓が鳴った。
ミノさんの目の下から、黒い隈がじわじわと表れていくような気がして、僕はギョンスから、ミノさんの瞳を隠す。
「今Aを行かせたら、ダメな気がするんだ……、……」
「なにいって、」
ぐぃ。と拒否できない尋常じゃないぐらい強烈な力に体を抱きしめられ、コートを着ているにも関わらず、体全体が雪に包み込まれたように、ひんやりと冷たくなる。
「……、……愛情なんて、うそだ………、………テミナが、待ってるのに。」
耳元に落ちた悲しげな言葉に、僕はぐらりと眩暈がした。
「…Aは、死んでる僕たちを、愛してくれるんじゃ、なかったのか……」
冷たい冷たい声が、耳にかかる。いたいのは、耳なのか、心、なのか。
「Aに、何の用？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 556人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルカ(プロフ) - 凄く凄く面白いです！！もう更新されることはないのでしょうか、？ (2020年7月10日 2時) (
レス) id: 2e0d30f8b8 (このIDを非表示/違反報告)
知世(プロフ) - すごくおもしろいです！続きが読めて嬉しいです！ (2018年1月11日 5時) (レス) id: 1c332bbfc6 (このIDを非表示/違反報告)
さわこ(プロフ) - 続きが気になります！！(..)更新頑張ってください！応援してます(ﾉ^∇^)ﾉ (2016年3月23日 22時) (レス) id: 9fb7565ee0 (このIDを非表示/違反報告)
citron.(プロフ) - はんはんさんの書く小説が1番好きです。更新頑張ってください！（ ; ; ） (2016年1月27日 13時) (レス) id: a29a69a082 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - すうちゃんがとても切ないです…なのにカイくんも。ああぁ(´；ω；｀)いつもいつもコメントしてしまってすいません笑 (2015年12月10日 20時) (レス) id: 1e32658c96 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はんはん | 作成日時：2015年9月25日 17時
