私は貴方達に懺悔する (ページ31)

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side.ヘレナ

ナワーブさんに助けてもらって、位置を確認して走り出す。

目指したのは、Aさんの所。

暗号機の音がするところにやって来た。

「Aさん」

ここにいるのは彼女のはずだから声を掛ける。

だが、返事は返ってこなかった。

そこではただ一定に、冷たく一人の心音が鳴っていた。

「Aさん……ですよね？」

不安になり、もう一度名前を呼ぶ。

ここでやっと彼女は解読の手を止めてこちらを見た。

「……ヘレナさん、無事だったんですね」

その言葉には、温度がなかった。

一言、二言ほど言葉を交わし私も解読を始める。

そうすると、彼女は解読をやめ数歩後ろに下がり笛を吹き始めた。

その曲を聴くと、何だか手元が雑になっていくのを感じた。

怒りをぶつけられて、むしゃくしゃする気持ちだろうか？

ただ何だか、怒れてきたのだ

ただ、雑なだけ解読速度は大分速くなった。

そして、調整が頻繁に来るようになった。

これが彼女の外在特質なのだろう。

でもその曲は怒っているような曲調なのに、

私には少し悲しんでいるようにも、

胸に広がる無力さを叫んでいるようにも聞こえた。

その音色に呼ばれるように、一人の殺人鬼が近づいてきていた

「もう、上がりますね」

いつもより大分速くなった解読速度で、さっさと一台上げる

「Aさん、行きましょう」

私は彼女に一言声を掛け走り出した。

彼女が私の声に気づいていないことを知らぬまま……