アルコール53% ページ9
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「へぇ。Aも大胆なことするんだね」
そう言って俺は、彼女の手を伝って目の前に差し出された物に有り付こうと顔を近付けた
しかし、それを辿ってAの顔が自然と視界に入ってくると、夜空のように輝く上品な瞼と、ふっくら、とした艶のある唇がそこにあって ── 思わず吸い込まれてしまいそうな感覚に陥いる
3秒程度、その状態で時計の針が止まった時、彼女が怪訝そうな表情をしていて我に返った
「何だよまじまじと」
「いや。随分と色気付いたみたいで」
取り繕うように自身の目元を指さすと、目を丸くして驚かれる
「え。お前。化粧って分かんだ」
「そりゃあね」
「すげぇな」
「何で?Aって普段は薄化粧じゃん。そんな目元キラキラさせてさ。気付かない方がおかしくね?」
酒を煽ると、一口分のレモンサワーが炭酸と共に喉を通って行く
やがて何も返事が無いことに気が付いて彼女を見ると、ポカーンと口を開けっぱなしにしていた
「何。俺変な事言った?」
「いや、バイト先の人には気付かれなかったからさ。" そんな微細な変化、お前に興味ある奴しか気付かねぇ " って」
真剣な顔で発言した彼女に耳を疑う
口元付近にあったグラスは知らないうちに離れていた
「え」
「あ。いやいや!お前がアタシに興味無いのは分かってから」
慌てて訂正をする彼女を他所に、耳の近くでは脈打つ音が聞こえている
(俺がAのこと気に掛けてるって?)
あともう少しで完全に酔いが回りそうな感覚に戸惑った
(いやいや。まさか)
「業?」
「でもホントは俺じゃなくて磯貝に見せたかったんでしょ。残念だったね」
「はぁ!?」
平然を装うために俺は意地の悪いことを言ってしまう
最初こそ分かり易く狼狽えるAだったが、何か思うところがあったのか、やがて照れくさそうに頬を掻いていた
「でもお前に気付いて貰えて嬉しかったかも。アタシのことよく見てくれてる感じがしてさ。良き理解者ってこう言うこと言うのかな」
そう言って彼女はこちらを見詰めて、花が舞うようにはにかんだ
その瞬間、アルコールに襲われたような衝撃を受けてぐらり、と視界が揺れる
あまりにも不覚な出来事に脳が追い付かないでいた
(Aってこんな可愛い奴だっけ)
「ん?黙りこくってどうしたんだ」
「アルコールフィルター恐ろしいなって思って」
「アルコールフィルターって何だ」
「内緒。Aには教えてやんない」
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しがない物書き(プロフ) - ゆあさん» 嬉しいご感想ありがとうございます!イケメン委員長がしっかりイケメン委員長していたようで良かったです✨️よろしければこの先もご覧くださると幸いです! (4月18日 12時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 磯貝くんのイケメン度が忠実に再現されてて、好きです。更新頑張ってください! (4月17日 23時) (レス) @page43 id: e604285060 (このIDを非表示/違反報告)
しがない物書き(プロフ) - たにさん» コメント嬉しいです!!🤤 たに様のメッセージで筆が乗ります! (3月25日 18時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
たに - 面白かったです! (3月25日 13時) (レス) @page38 id: 9b7538881a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しがない物書き | 作成日時:2023年12月20日 3時