お酒は二十歳になってから ２杯目

アルコール88% ※若干ぴんく ページ44

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高層階の寝室に差し込んだ月光が、彼の片側の頬を差す

生温い空気感の暗がりの寝床は、グラス越しにカクテルのペリーニを覗いたような色に包まれていた

首周りを一周していた襟締を、シュル、とノールックで解く彼を見ていると、いよいよ今から飛んでもない事象が起ころうとしていると頭が錯乱する

アタシに騎乗するように跨ぎ、余ったもう一方の腕はがっしりと力強くこちらの手首を拘束して、まるで逃げることを許さないかのようだった


「俺、Aのことダチとして見てないよ」


獲物を見る目でそう言った彼に、アタシは数分前の自分の発言を心の底から後悔していた


「おい。スーツくらい脱げよ」


中央区銀座の一等地に立つ25階建てのタワーマンションの一室

酔いが回った成人男性を肩に担いで寝室に連れ込むと、フラつく足取りでベッドになだれ込んで行ったもので、アタシはそう釘を刺したのだ


「へぇ。それがAの誘い方？」


ところがどっこい、溶けてしまいそうな顔で彼はアタシの袖を引っ張った

一瞬男女のそれを想像をしてしまい、身体の内側から身震いが起きる


「シネッ！皺になるつってんの！」

「だよね〜。紛らわし」

「今の発言マジで有り得ねぇ！猛省しろ！お前の酒癖最悪だな！」


そこまで言い切ると息が上がっていた


アタシ達は友達の一線を超えられなかった仲だ

そう取り決めたのは彼の方だと言うのに

だから何があっても絶対に間違っては行けない


「第一、お前だってアタシのことそういう目で見てねぇだろうが！対象じゃないくせにそういうこと言うな！」


極め付けに怒鳴り散らすと、何故か布団の方に引き込まれて行って ── 気が付いたら天井を見上げていた


──
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──


( " ダチとして見てない " ってどういうこと)


アタシの中で強く友達だと思い続けていた相手が、ベッドの上で抱き着いてくる

足が絡むと衣服同士の擦れる音がする

この続きは恋愛経験が無くても流石に分かった


「ま、待て！」


早る焦燥に季節外れの冷や汗

どうしたら止まってくれるのか、そればかりを考える


(一か八か殴るか？でもこいつ殴ってどうにかなるのか？)


ドッドッ、と発作に近い症状が引き起こって、作っていた握り拳にも脈拍が伝う


見境が無くなった彼はまるで別人だった

あまつさえ、薄らと視界がぼやけて来て ──


(本格的にやばい。終わる)


友達と一夜の過ちを覚悟してしまった





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