アルコール85% ページ41
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── purururu
デニムのポケット部分からけたたましく鳴り響く場違いな着信音で、はっ、と一気に現実に引き戻される
振り絞って打ち明けようとしていた告白が泡のように溶けて消えてしまい、アタシは喪失感で立ち尽くしていた
「電話鳴ってるぞ。大丈夫か?」
「う、うううん!そう。そうだよな。アタシちょっと出て来る」
「あ、Aさん!」
呼び止める彼を他所にその場を離れる時は、歯切れの悪い返事をするだけでも精一杯だった
真っ赤になった顔で、覚束無い足元で必死に彼から逃げる
このまま行方知らずになってしまいたいくらいだ
次第に、尚のこと音を立て続ける電子音に苛立ちが募ってきた
(どこのどいつだ!邪魔しやがったのは)
バイブレーションが伝う右太腿のポケットに手を突っ込み、ぶっきらぼうにスマートフォンを取り出すと、表示画面に映し出された ── 赤羽業と言う文字に青筋が立つ
タガが外れた瞬間だった
「テんメェェェ!ぶっ殺されてぇのかァァ!?」
「あ。・・・・・・すみません」
「え」
思いがけない丁寧な言葉遣いが聞こえてきて、アタシまで冷静になる
「・・・・・・こちらこそすみません」
どうやら知らない人を怒鳴り付けてしまったようだ
(誰だろ。申し訳無い)
「えっと。左右田さんですか?」
「そうです。あの、どちら様すか」
「僕は赤羽さんの部下です」
はて、と再度思考が止まる
「どうして部下の方が業の電話番号から?」
「急にすみません。実は今赤羽さんと一緒なのですが、潰れてしまわれまして。迎えに来ていただけないでしょうか?」
「はぁ!?潰れた!?」
(何してんだよあいつ)
泥酔するまで飲むだなんて聞いて呆れた
「・・・・・・ちなみに場所どこすか」
「千代田区になります」
「千代田区」
偶然にもアタシは主要駅にいるもので、千代田区まで銀座線ですぐのところだから、ここまで打って付け役はいないだろう
(はぁ・・・・・・)
行くしか無いのか
「すみません。僕では上司の家がどこか分からず」
「あぁ。そういうことすか」
「左右田さんは仲の良い方だと聞いてまして。
・・・・・・って、お忙しいですよね?やっぱりビジネスホテルに連れて行こうと思います」
「あ、いや。アタシすぐ行きます!ちょっとそこで待って下さい」
ピッ、と終話のボタンを押して、足早に東京メトロに乗り込んだ
「だぁもう!あいつタダじゃおかねぇ!今度何か奢らす」
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しがない物書き(プロフ) - ゆあさん» 嬉しいご感想ありがとうございます!イケメン委員長がしっかりイケメン委員長していたようで良かったです✨️よろしければこの先もご覧くださると幸いです! (4月18日 12時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 磯貝くんのイケメン度が忠実に再現されてて、好きです。更新頑張ってください! (4月17日 23時) (レス) @page43 id: e604285060 (このIDを非表示/違反報告)
しがない物書き(プロフ) - たにさん» コメント嬉しいです!!🤤 たに様のメッセージで筆が乗ります! (3月25日 18時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
たに - 面白かったです! (3月25日 13時) (レス) @page38 id: 9b7538881a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しがない物書き | 作成日時:2023年12月20日 3時