アルコール83% ページ39
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東の空に描かれたオリオン座が都心の駅を見下ろしていた
すっかり夜が更けた街灯頼りの改札口で、小刻みに脈打つ音を聞きながら、アタシはいつ現れるか分からない彼を落ち着きの無い挙動で待ち伏せる
(どうしよう。緊張してきた)
友人の結婚式を最後に靴箱に収められていたヒールを引っ張り出し、クラスメイトに似合うと煽てられた高い召し物を身に付け、黒縁の眼鏡は辞めて ── 綺麗と褒められた瞳でショーウィンドウに移る自分の姿を頻りに確認する
外向きに一周螺旋状になった巻き髪と、束感のある上向きの睫毛が自分には映えていない気がして、まさに兎に祭文と言ったところだ
(カエデちゃん。やっぱアタシには似合わないってばぁ)
そう心の中で縋るように友人に泣き付いた
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──
それは今から1時間前のことだった
入場許可証を首からぶら下げて入って行った煌びやかなCMスタジオに尻込みをしながら、アタシは手招きをする女優におずおずと近付いた
「なぁ、本当に良かった?」
「撮影の合間だから大丈夫だよ!この間のメイクだよね?」
「う、うん」
「OK!Aちゃんここに座って」
「頼んます」
貰い物の化粧品が詰まっているポーチを手渡すと、カエデちゃんはテーブルの上にそれを広げて、アタシの肌に順番にベースメイクを重ねて行く
「今日のAちゃんお洒落だね。これからお出掛け?」
そう言った彼女の目先には、青いニットに身を包んだアタシが居た
あ〜、と言葉を濁すアタシの傍らで、カエデちゃんはフェイスパウダーをムラ無く丁寧に叩いている
「・・・・・・実は今日悠馬に告白しようと思って」
「えぇぇえ!?」
「うわっぷ!カエデちゃん粉すっげぇ舞ってる!」
白い粉の粒子が空気中に飛散して咳き込む自分と、アタシ以上に動揺する女優とで現場は混沌と化す
「大変大変!(告白って)一大事だよ!」
「いやマジで(掃除が)大変だぞ」
「Aちゃん。飛び切り綺麗にしちゃお!」
「そうだな」
「お〜!珍しくノリノリだね!任せて。絶対に可愛くするから!私コテと竹串持って来る」
「え。今なんつった」
湾曲した会話が一つになることは無く、そこからあっという間に19ミリのヘアアイロンで脱色した髪を巻かれ、炙った竹串で器用に睫毛を逆立たせられた
「なぁ、変じゃない?」
「変じゃないよ!Aちゃんの晴れ舞台だからこれくらいはしなくちゃね!告白頑張って!」
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しがない物書き(プロフ) - ゆあさん» 嬉しいご感想ありがとうございます!イケメン委員長がしっかりイケメン委員長していたようで良かったです✨️よろしければこの先もご覧くださると幸いです! (4月18日 12時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 磯貝くんのイケメン度が忠実に再現されてて、好きです。更新頑張ってください! (4月17日 23時) (レス) @page43 id: e604285060 (このIDを非表示/違反報告)
しがない物書き(プロフ) - たにさん» コメント嬉しいです!!🤤 たに様のメッセージで筆が乗ります! (3月25日 18時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
たに - 面白かったです! (3月25日 13時) (レス) @page38 id: 9b7538881a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しがない物書き | 作成日時:2023年12月20日 3時