アルコール79% ページ35
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「そう言えばA。就職出来たの?」
アタシから少し距離を置いたところの地べたに座っている彼は突然そう言った
右手にある切り分けたパンケーキが刺さったフォークを、口に放り込もうとしていた最中のアタシは、あ、の字に唇を開けたまま、誉を送り届けたことを思い返す
「これも何かのご縁だわ。左右田さんさえ良ければうちで就職どうかしら」
人当たりの良い園長先生からそんな台詞を言って貰ったのは ── 電話でアタシに励ましの言葉を贈ってくれた彼のお陰でもある
恩人と言えば調子に乗りそうなものだが、感謝を込めて報告くらいはしないといけないと思った
手に持っていたスイーツを小皿の上に戻して、勢いよくベッドから立ち上がる
(そうだ!業にあれ見せてやろう)
部屋の隅にあるトートバッグの中を漁ってとあるネームホルダーを取り出すと、アタシは意気揚々と彼の目の前に置いた
「どうよ!」
「え?」
「ほらよく見ろ。ここに " 左右田先生 " って書いてるだろ」
その意味に気が付いた彼はキュ、と口角を上げる
「へぇ〜。やるじゃん。晴れて保育士になれたんだ」
「そう!まぁ、正規雇用は今度の春からだけどな」
「上出来だよ」
「ウッス」※訳:ありがとう
彼が自身の胸の前で作る握り拳に、アタシも同等の物を作って、それに当てがうようにグータッチを交わした
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「うちの子が困っているところをご親切にどうもありがとうございました」
「いやいや!顔を上げてください」
既視感のある住宅路を潜り抜けた先にあったのは、これまた見覚えのある木造の建物で ── 中学時代にクラスメイトが建築したアスレチックが廃る事無くそのまま残っていた
(なんか感動する)
「A遊ぼ〜」
アタシの腰元でシャツを元気に引っ張る誉は、わかばパークの園児であった
「あれ立派でしょう。昔、椚ヶ丘の生徒さんが作って下さったの」
「そうすか!今の聞いたら千葉が喜ぶだろうな〜」
「あら。もしかしてお知り合い?」
「と言うよりは、アタシもその生徒の一人です」
「まぁ!」
目を丸くして驚いている園長先生を他所に、幼児の彼は先程よりも大きな声で叫ぶ
「A!早く遊ぼ!鬼ごっこ!」
「わーったよ。すみません、ちょっと遊んで行っても良いすか?」
「勿論よ。誉くんったらすっかり左右田さんを気に入っちゃって。うちの職員でも手を焼く気難しい子なのに」
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しがない物書き(プロフ) - ゆあさん» 嬉しいご感想ありがとうございます!イケメン委員長がしっかりイケメン委員長していたようで良かったです✨️よろしければこの先もご覧くださると幸いです! (4月18日 12時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 磯貝くんのイケメン度が忠実に再現されてて、好きです。更新頑張ってください! (4月17日 23時) (レス) @page43 id: e604285060 (このIDを非表示/違反報告)
しがない物書き(プロフ) - たにさん» コメント嬉しいです!!🤤 たに様のメッセージで筆が乗ります! (3月25日 18時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
たに - 面白かったです! (3月25日 13時) (レス) @page38 id: 9b7538881a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しがない物書き | 作成日時:2023年12月20日 3時