アルコール77% ページ33
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腰から下くらいの大きさのワンドア冷蔵庫から、寝かしていた生地が入ったボウルを取り出して、彼女は慣れた手付きでフライパンの上にそれを落とした
バターが溶けた香ばしい匂いと共に、カスタード色の生地の表面には小さな気泡が出来始める
Aはタイミングを見計らって、よっ、と言いながらフライパンを前後に振るうと、パンケーキが見事にひっくり返ったもので、綺麗な焦げ茶色の片面と目が合った
(こういうの割と器用だよね)
やがて出来上がった焼き立ての生地を3枚、大皿の上に乗せて、特大サイズの生クリームを大量に掛け出し始める
「うわ。何このゲテモノ」
「エクストラホイップストロベリーメガ盛りパンケーキ」
「はい?」
「だからエクストラ」
「誰も " もう一回言って " なんて言ってないから」
「あっそう」
俺の質問を右から左へと聞き流して、彼女は続いて苺ジャムをスプーンで掬ってこれまた大量に掛け出した
「・・・・・・深夜にスイーツねぇ」
「さっきから文句ばっかでうるせえな。お前もやれ」
そう言って、まるで俺に共犯でもさせるかのように、トッピングに使う苺が入ったボウルを手渡してくる
「ねぇ、どうして俺とこれが食べたかったの?」
等間隔に赤い果実を並べながら問うと、横で作業をしながらAは答える
「何でって。そりゃあ、甘いもん食ったら大抵の嫌なこと忘れるだろ」
「え」
「あれ?違うのか?」
彼女は手に持っていた銀色の匙を空に浮かせたまま、疑いの無い澄んだ瞳でこちらを見ていた
「アタシお前の憂さ晴らしに付き合うつもりで居たわ。てっきり仕事で何かあったのかと」
「いや合ってるよ。よく気が付いたね」
「やっぱりそうか。お前が突拍子も無く会いに来る時点で、おかしいと思った」
「ただAに会いたかったって可能性は?」
「あ〜、無い無い。アタシら恋人同士じゃねぇんだから」
俺の言葉では崩れないその鉄壁の表情に、矢も盾も堪らない思いになる
(少しくらい想像してくれたって良いじゃん)
無意識の内に唇を尖らせて、平然としている彼女に抗弁をしていた
「昔、俺のこと好きだったくせに」
「はぁ?」
「今、3年間片想いしてた男にそれっぽいこと言われてるんだよ?ちっとも靡かないんだね」
「それフッた奴が言う台詞じゃねぇだろ。え、もしかして。アタシのこと馬鹿にした?」
「・・・・・・違うよ。流されてちょっとムカついただけ」
「意味が分からん」
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しがない物書き(プロフ) - ゆあさん» 嬉しいご感想ありがとうございます!イケメン委員長がしっかりイケメン委員長していたようで良かったです✨️よろしければこの先もご覧くださると幸いです! (4月18日 12時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 磯貝くんのイケメン度が忠実に再現されてて、好きです。更新頑張ってください! (4月17日 23時) (レス) @page43 id: e604285060 (このIDを非表示/違反報告)
しがない物書き(プロフ) - たにさん» コメント嬉しいです!!🤤 たに様のメッセージで筆が乗ります! (3月25日 18時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
たに - 面白かったです! (3月25日 13時) (レス) @page38 id: 9b7538881a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しがない物書き | 作成日時:2023年12月20日 3時