アルコール76% ページ32
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「あ、先に言っとく。今、アタシの部屋とっ散らかってる」
白い鉄パイプがオレンジ色の錆び付きで塗り替えられた階段を登りきった先で、彼女は振り返ってそう言った
隣同士の間隔が狭いドアとドアを、4つ程越えた突き当たりの部屋がAの住んでいるところのようだ
ドアノブの真ん中に鍵穴があるタイプの玄関扉を開けた向こうは、人が2人立つには狭過ぎる三和土があった
靴を脱ぐだけでも身動きが取れない
「うわ。狭」
「悪いな。豪邸じゃ無くて」
暗闇の中、彼女が手探りで照明のスイッチを押して3秒後、ようやくチカチカと頼り無い灯りが付いた
物を置くことも許されない狭い廊下に、おまけ程度で付けられたコンパクトな古そうなキッチン
そこを抜けたすぐのメインの部屋には、取り込んだ後の洗濯物の山があり ── 目のやり場に困るスポーツブランドのロゴが入ったブラジャーが一際目立って転がっていた
「人呼ぶならせめて下着くらいは片付けてよ」
「お〜、悪い悪い。バイト前に畳もうと思って置いてたんだった。それ退けて座ってくれ」
気にも留めようとしない彼女の意識の低さに絶句する
「ねぇ、見られて恥ずかしいとか無いわけ?幾ら色気が無いにしても、ホント有り得ないんだけど」
「うるせぇな。別に良いだろスポブラくらい。思春期かよお前は」
背を向けてダウンジャケットを脱ぐAを見ていると、カチン、と頭に来た
一方的に主眼を置いていたことが、どうも納得が行かなかったのだ
「Aさぁ、自分は女子だって言う自覚少しは持ちなよ。そんなだから磯貝に意識して貰えないんじゃない」
「うっ」
その場の当て付けで言い放った台詞だったが、彼女には思っていたより刺さったらしく、従順に洗濯物を畳み出す
「ご、ごめん。アタシが悪かった」
Aはバツが悪そうに小声で呟いている
「なぁ。悠馬にはこの事言うなよ。
・・・・・・特に下着が色気無い事とか」
(俺に指摘された時はそんな反応しなかったくせに)
「バレたら幻滅されるね〜」
「は?ふざけんな!言ったらタダじゃおかない!」
急に立ち上がったかと思えば、俺の胸ぐらを掴んで至近距離で睨み付けてきた
「絶対にここだけの秘密にしろ」
「ちょっ。分かったから。真近でガン飛ばすの辞めて」
「だったら最初からそう言え」
(軽々しく磯貝の名前出すんじゃ無かった)
自ら野郎の話題を振っておいて自滅したとは、口が裂けても言えない
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しがない物書き(プロフ) - ゆあさん» 嬉しいご感想ありがとうございます!イケメン委員長がしっかりイケメン委員長していたようで良かったです✨️よろしければこの先もご覧くださると幸いです! (4月18日 12時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 磯貝くんのイケメン度が忠実に再現されてて、好きです。更新頑張ってください! (4月17日 23時) (レス) @page43 id: e604285060 (このIDを非表示/違反報告)
しがない物書き(プロフ) - たにさん» コメント嬉しいです!!🤤 たに様のメッセージで筆が乗ります! (3月25日 18時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
たに - 面白かったです! (3月25日 13時) (レス) @page38 id: 9b7538881a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しがない物書き | 作成日時:2023年12月20日 3時