アルコール75% ページ31
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居酒屋の仕事服の上からカーキ色のダウンジャケットを羽織って、店外の赤い暖簾を下ろす午前零時頃
澄んだ空気と、等間隔に並んだ温かみのある街灯はもう時期訪れる本格的な冬を知らせていた
今晩は店長のシフトがオフだったため、アタシが店の最終責任者である
最後に硝子戸を施錠しようと懐から鍵を取り出すと、アタシのすぐ横で、ぬ、と人影が動いた
「相変わらず営業時間の長い店だね」
「のわァァ!」
「アハハッ。Aって心霊系もダメだっけ」
「闇から急に現れんな!」
驚きのあまり、叫んだ声が白い靄になって空に上がって行った
こちらの反応を見て楽しそうに笑っている赤髪のそいつに、数秒を経ても尚アタシの理解が追いつかないでいる
「お前は何でここに居んだよ!」
「ん〜。ちょっと顔拝みたくなって会いに来ちゃった」
「はい?」
何の脈絡も無く発せられた言葉では、業の意図が全く読めなかった
しかし、突然友人を尋ねる理由を考えると ── 自ずと答えは絞られて行く
(何かあったんだな)
今の彼は虫の居所が悪いのだろう
そうじゃ無ければ、この時間にアタシの目の前に立っている説明が付かないのだ
(しゃあねぇ。仕事の愚痴でも聞いてやるか〜)
「お前晩飯食った?」
「まだ。Aが良いなら、今から一軒行かない?酒は飲まなくて良いからさ」
彼の誘いの言葉とは裏腹に、大量に甘い物が入っている自分の家の冷蔵庫がアタシを呼んでいた
「いや今日はアタシん家にしようぜ」
「え」
「最近、出費が嵩んでてさ。外食は控えたいんだわ。うっし、行くぞ」
そう言って家で待つスイーツ達の方角に身体を向けた途端、腕を掴まれて進む方向とは逆向きに反動が起こった
「んだよ」
「この時間に男を家に上げてサシ飲みって正気?つか、俺奢る気だけど」
「良いっつの。この間も出してくれたろ。第一お前はアタシのこと女として見てないから問題無しだ」
「は?」
「は?」
何故そこでその回答になるのだ
いつもならすぐに肯定の言葉が飛んできて、啀み合う流れになるだろうに
(意味分からねぇ)
露出した肌を刺すような冷たい空気が、赤くなった自分の鼻を掠める
「なぁ、ここでずっと突っ立てても寒い。良いからアタシん家でパッとやろう。終電逃したから20分歩くぞ」
「マジで言ってんの」
「だぁ!もう執拗い奴だな!お前と食べたい物があるから来いっつてんの」
「・・・・・・ずるい言い方」
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しがない物書き(プロフ) - ゆあさん» 嬉しいご感想ありがとうございます!イケメン委員長がしっかりイケメン委員長していたようで良かったです✨️よろしければこの先もご覧くださると幸いです! (4月18日 12時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 磯貝くんのイケメン度が忠実に再現されてて、好きです。更新頑張ってください! (4月17日 23時) (レス) @page43 id: e604285060 (このIDを非表示/違反報告)
しがない物書き(プロフ) - たにさん» コメント嬉しいです!!🤤 たに様のメッセージで筆が乗ります! (3月25日 18時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
たに - 面白かったです! (3月25日 13時) (レス) @page38 id: 9b7538881a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しがない物書き | 作成日時:2023年12月20日 3時