アルコール64% ページ20
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「あ〜あ。最悪だ」
泣き腫らした後の充血している目で、彼女はそう後悔をしている
俺達は厨房のステンレスシンクに横並びになって、泡の立ったスポンジを使い、食器やグラスを洗っていた
ホールは既にAによってリセットされており、残すところは洗い物のみである
「いつまでウダウダ言ってんの」
「だって。よりによってお前に見られたんだぞ。アタシ何であんなに泣いたんだ。はぁ」
目先では慣れた手付きでスピーディに洗い物を熟しているものの、先程からずっとぶつくさと不貞腐れた様子だ
俺に弱い部分を見られて納得が行かないらしい
どうしようも無い意地っ張りだけれど、そんなところも彼女の愛嬌だと身に染みて感じてしまう
「お陰様でスーツの至るところにAの化粧が付いてるけどね〜」
「そ、それはお前が汚して良いつった!今更文句言って来るんじゃねぇよ。先に言っとくと、アタシは悪くないからな」
「うーわ。可愛げの欠片も無いね。ホントにさっきまで、俺に大人しく抱かれてたの?」
「はぁ?黙れよ。これ以上掘り返したら殺す」
「大体、Aがチョロいんだって。結婚の話で舞い上がり過ぎでしょ」
「これ以上掘り返したら殺す!」
活気のある声を上げ、顔を真っ赤にしてこちらを睨んでいる
それを目の当たりにした瞬間、じわ、と酒気が帯びていった
(悔しいけど可愛い)
「それで?まだ好きでいるつもりなんだ」
「あのなぁ。簡単に辞められたらアタシだって苦労してねぇんだわ」
「ふぅん。一途だねぇ」
精一杯の嫌味を言ったつもりだけれども、肝心の彼女は平然としているもので、何も感付かないらしい
隙があったら横から掻っ攫ってやろうと目論むが ──
(これは俺も一苦労しそう)
たった今も、特定の相手に首ったけの彼女を見ていると " 手遅れ " の三文字だけが脳裏に浮かんだ
「アタシ好きな人出来たの久しぶりだからさ。どうして良いか分からねぇ」
「そ」
意識した途端に、彼女も一人の女の子になった
気を抜けば、Aの頬を染めている赤いものがこちらにまで移りそうになる
「前原にも "もうちょっと可愛くしろ " って言われたしさ。そんなに魅力無いかなぁ」
「俺はそうは思わないけどね」
「そりゃあどうも」
俺の好意を軽く流し、うーん、と磯貝のために頭を抱えて悩み始める
(ダメだ。もう何をしてても可愛く見える)
いつまでこの気持ちを仕舞いこんでおけるだろう
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しがない物書き(プロフ) - ゆあさん» 嬉しいご感想ありがとうございます!イケメン委員長がしっかりイケメン委員長していたようで良かったです✨️よろしければこの先もご覧くださると幸いです! (4月18日 12時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 磯貝くんのイケメン度が忠実に再現されてて、好きです。更新頑張ってください! (4月17日 23時) (レス) @page43 id: e604285060 (このIDを非表示/違反報告)
しがない物書き(プロフ) - たにさん» コメント嬉しいです!!🤤 たに様のメッセージで筆が乗ります! (3月25日 18時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
たに - 面白かったです! (3月25日 13時) (レス) @page38 id: 9b7538881a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しがない物書き | 作成日時:2023年12月20日 3時