アルコール55% ページ11
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閑静で人影も疎らな駅前の昼下がり
仕事場の制服を着たアタシは、居酒屋の入り口である ── ガラスの引き戸の前で、ホワイトペンを片手にしゃがみ込んでいた
店前に用意された立て看板に " 本日完全貸し切りに付き休業 " と言う文字を書き殴ると、その様子を見ていたのか背後からヒック、としゃっくり混じりの声が聞こえてきた
「よぉ、Aちゃん」
(あ、いつも来てくれるおじさんだ)
腰を持ち上げて、丸く突き出たお腹の中年男性に頭を下げる
「ウッス」※訳:こんにちは
「今日店やらないの?」
「そうなんすよ。一日中団体のお客さんが貸し切ってて」
「そうかい。ここで飲むのがおいらの楽しみだってのにな。店長は儲けになるって喜んでるだろう」
「すみません。また今度待ってます」
「あぁまたね」
残念そうな表情の常連客を見送ってから、アタシはホワイトペンにキャップをし、まだ何も掛けられていないビスで固定された暖簾掛けを見上げた
(さてと。悠馬達が来るまでにちゃっちゃと済まさなくては)
貸切の団体客というのは、実はE組の皆ことである
「仲良いもん同士で適当によろしくやってろ。店番は面倒だから左右田に任せて帰るぞ」
せっかくの同窓会だから、と気を遣って颯爽と去って行った店長には感謝しなくてはならない
(まぁ、本当に面倒だっただけの可能性もあるけど)
アタシの頭の中は山積みの準備すべきことがひしめき合うように詰まっていた
まずは店外の準備、続いて店内のテーブル拭き上げ
焼き鳥串や唐揚げの仕込み、クラスメイト全員分のジョッキやグラス、おしぼりや箸類の手配など
(うっし。頑張ろう)
残り時間で全てを熟すのには少し足りない気もするが、やるしかないのだ
そう自分を奮い立たたせ、引き戸に立て掛けていた赤色の暖簾を片肩に担ぐと、突如後ろから声が飛んで来た
「こんにちは」
(今日に限ってお客さん多いな)
「あー、すみません。今日完全貸切で」
そこまで言いかけてアタシは言葉を失った
「は!?悠馬!?お前まだ約束の二時間前だぞ?」
瞳の中にはスーツ姿の意中の彼が映っていて、脳内が驚きで溢れ返っていたのだ
「仕事が思ったよりも早く終わってさ。そう言うAさんだって、一人で準備しようと思ってたんだろう」
「いや。だってここアタシの店だし」
「でも今日は同じお客さん同士だぞ。俺にも手伝えることあるかな?」
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しがない物書き(プロフ) - ゆあさん» 嬉しいご感想ありがとうございます!イケメン委員長がしっかりイケメン委員長していたようで良かったです✨️よろしければこの先もご覧くださると幸いです! (4月18日 12時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 磯貝くんのイケメン度が忠実に再現されてて、好きです。更新頑張ってください! (4月17日 23時) (レス) @page43 id: e604285060 (このIDを非表示/違反報告)
しがない物書き(プロフ) - たにさん» コメント嬉しいです!!🤤 たに様のメッセージで筆が乗ります! (3月25日 18時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
たに - 面白かったです! (3月25日 13時) (レス) @page38 id: 9b7538881a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しがない物書き | 作成日時:2023年12月20日 3時