アルコール45% ページ1
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東京の主要駅から20分程離れたところにある築年数が香ばしいアパートに、家賃が抑えられるという理由で専門学生時代から住み着いている
すっかり慣れ親しんだ狭い1Kの、部屋の片隅に追いやられたベットの上でうつ伏せになりながら、スマートフォンの連絡ツールを頻りに確認する昼下がり
(連絡来ねぇな)
そう思いながらアタシが見ていたのは、E組のグループラインだった
最後に届いていた通知は旧校舎の清掃の連絡で、日付けを何気無く見てみると、そこから今日に至るまで3週間は優に経過していた
それもその筈、アタシ以外のクラスメイトは皆社会人なのだから、全員が毎週のようにプライベートの時間を確保出来る訳が無いのだ
(今頃、皆仕事で忙しいんだろな)
学生時代は当たり前のように簡単に、毎日彼らの顔を拝めることが出来た
だからこそ、大人になって邂逅出来る時間はとりわけ貴重で ── " また今度 " がいつになるかも分からない
少し寂しい思いに耽っていると、ふと彼の顔を思い出す
(悠馬は何してるだろ)
平日の午後だから、きっとまだスーツに腕を通していることに違い無いだろう
大手財閥系商社の新卒採用で営業本部に所属しているから、先輩と一緒に外回りの最中で、昼食もままならないまま汗を流して、アタシのことなんて考える隙がないくらい忙しくしている ── そんな姿を想像し気が滅入りそうになる
(仕事とアタシどっちが大事なの、って今なら分かる)
アタシが知らない社会人の彼の顔
いつも何時に目が覚めて、何を食べて、何を思って出社するのだろうか
そう知りたいことが増えて行くばかりで、アタシは悶々と思いを募らせていた
(はぁ。次会えるのいつだろ)
彼のことで頭がいっぱいになりながらベットから起き上がり、アタシはローテーブルに置かれた化粧ポーチから下地とファンデーションを取り出した
(さて、そろそろ準備でもするか。
・・・・・・あ)
手に取ったリキッドファンデーションが、残りわずかになっていることに気が付く
アタシの部屋のカーテンレールには、ハンガーに吊り下げられている黒いシャツと黒いスラックスが出番を控えていた
(夕方からのバイトまでまだ時間あるな)
こんな時間だからどうせ知り合いには誰にも会わないことだろうし、コンビニに行って買って来よう
そう思い立ったアタシは部屋着姿で化粧も施さないまま、財布だけを片手にアパートを後にしたのだった
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しがない物書き(プロフ) - ゆあさん» 嬉しいご感想ありがとうございます!イケメン委員長がしっかりイケメン委員長していたようで良かったです✨️よろしければこの先もご覧くださると幸いです! (4月18日 12時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 磯貝くんのイケメン度が忠実に再現されてて、好きです。更新頑張ってください! (4月17日 23時) (レス) @page43 id: e604285060 (このIDを非表示/違反報告)
しがない物書き(プロフ) - たにさん» コメント嬉しいです!!🤤 たに様のメッセージで筆が乗ります! (3月25日 18時) (レス) id: be0c646a52 (このIDを非表示/違反報告)
たに - 面白かったです! (3月25日 13時) (レス) @page38 id: 9b7538881a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しがない物書き | 作成日時:2023年12月20日 3時