第三十六話 主は物知り ページ38
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「うえぇぇぇん!」
「よしよし。……熱が上がってきたみたいだね」
「ふむ。確かにいつもより温かいような気がするな」
「俺、主呼んでくるよ」
意外にも、Aの様子を見た全員は静かになった。さすがにふざける場合ではないと気づいたのだろう。布団を囲むようにして座っている。
加州が主を呼びに行った。あれからそれほど時間は経っていないが、熱はどんどん上がっているようでAは額に汗をかいている。その顔は真っ赤だ。
そわそわと皆が心配そうにAを見つめる。初めての事態に下手に手を出せないのだった。
その内に主が駆けつけてきてくれた。
「まぁまぁ……」
主はAの様子を見ると、すぐさま廊下へ逆戻りする。
そして、哺乳瓶とタオルと桶を持って戻ってきた。しかし、哺乳瓶の中に入っているのはミルクではない。水のようだ。
「赤ちゃんの熱は、脱水症状になるのが恐いの。だから、こまめにこの水をあげて」
「井戸水かい?」
「いいえ。これは赤ちゃん用のイオン水」
「何か違うんですか?」
「ええ。
これはね、赤ちゃんに適した水。水分の吸収率が高い水なの。常温のままあげるのよ。もし、哺乳瓶に入っている水が無くなったら、私の部屋に来てちょうだいね。
じゃあ浦島、あげてくれる?」
「お、俺? やっていいの?」
「ええ」
浦島が目を輝かせて水をあげている内に主は着替えを用意し、それと同時に近くにあった桶にタオルをかけた。
「主さん、もういらないみたいだよ」
「じゃあ、ちょっとかしてね」
主はAの服を脱がし、タオルの内の一枚で身体を拭き始めた。汗を拭いているということは容易にわかった。どうやら人肌に温めてあるそうだ。
そして主が持ってきた桶の中に入った冷水にタオルを浸すと、きつく絞って首にそれを当てた。
「主、それはなんだい?」
石切丸が問いかける。
「おでこを冷やすより、こうやって太い血管が通っているところを冷やしてあげると熱が下がるのよ」
「ほぅ……」
薬研が大将は物知りだなと呟いた。
「だー……」
「眠くなってきたようだな」
「寝そう」
そう言った数分後、熱と泣き疲れたからかAは眠りについた。
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華骸(プロフ) - 彼岸さん» ご指摘ありがとうございます! 勉強不足でした、すみません……。これから書き直してきたいと思います! 期待に応えられるような作品に近づけられるよう頑張ります(o゜◇゜)ゝ (2016年5月15日 15時) (レス) id: 31ae3f7e34 (このIDを非表示/違反報告)
彼岸 - 三日月ほとんどあなやしか言ってないじゃないですか。もう少し頑張ってください (2016年5月15日 1時) (レス) id: 1299317818 (このIDを非表示/違反報告)
彼岸 - あなやの使い方間違ってるよ (2016年5月15日 1時) (レス) id: 1299317818 (このIDを非表示/違反報告)
華骸(プロフ) - kotoさん» 返信おくれてすみません! 喉は大丈夫ですか? リクエストして貰えたのが嬉しくて直ぐ様書きました(笑)喜んでいただけたなら幸いです(о´∀`о) (2016年5月9日 19時) (レス) id: 31ae3f7e34 (このIDを非表示/違反報告)
koto(プロフ) - 夜中(※丑三つ刻)に布団の中で続き読んでたら声にならない声で叫んでました。(ひぃ、喉痛い。)リクエストにこんなに早く対応して頂けるとは……ありがとうございます!(*´∀`*) (2016年5月9日 2時) (レス) id: cd7f3fd207 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華骸 | 作成日時:2016年4月6日 20時