しとしと。 ページ24
.
まだ遠くで花火の音が聞こえる帰り道。
終わるまで居たら帰れなくなるだろうからという案だった。
付き合ってもいないのに、手を繋いでいるなんておかしいかな。
まあ、いいだろう。
これが、今のカタチなんだ。
まだ、これ以上先に進めないから。
進もうとしたら、先生が困っちゃうから。
それは、俺が許さない。
俺の身勝手な気持ちに、せっかく先生が反応してくれているのに。
これ以上、なんて。
俺にはできない。
だから、まだ。このままでいい。
特にこれといって何も話すことはなく、車が行き交う音が聞こえ、夏の生温い風が肌を撫でる。
沈黙は続いていたけれど、気まずい。なんて感情は湧かなくて。
沈黙は続いていたけれど、俺の手と先生の手はそのままだった。
あぁ、駅に着いてしまった。
あっという間に、という表現は何か違うし
長かった、という表現は何か違う。
早くも遅くもない、そんな時間。
何でも暑さのせいで、済ませてしまえるこの季節。
あのキスも、あの表情も、あの言葉も。
今日、起こったこと全て。
暑さのせい、だった。
そう言われてしまえば、全て終わりなのだろうか。
なら、これも暑さのせいにして。
全て、夏のせい。
全て、騒がしく鳴るセミの音のせい。
全て、全て。
______＿＿＿＿＿俺のせい。
「......待って、先生。」
少し先を歩いていた先生の背中に抱きつく。
ピタっと先生が止まったのが伝わった。
「....やまだくん」
蜂蜜のような、甘い声。
甘ったるい匂い。
「......なんでもないです！」
ぱっと手を離す。
「......先生、さよなら」
今日という日を境に、「先生」という言葉も、「さよなら」という言葉も、後ろから抱きつかれる感覚も。
全て先生の心に刷り込んでしまえばいい。
その言葉を言われるだけで、その行動をされるだけで、今日を思い出してしまうような。
俺を思い出してしまうような。
そんな、情けない願い。
先生に背を向けて、歩き出す。
一歩、また一歩。
「.....っ山田くん！」
あぁ、きっと。
先生は超能力かなんか持っているんだろうな。
俺の心にゆっくりと、深く、深く刷り込まれていく。
今日で、「山田くん」も、後ろから抱きつかれる感覚も、後ろから走ってくる音も、駅の無機質なアナウンスも。
全て、
全て。
先生のモノだ。
☂更新遅くなってしまいすみません。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 89人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
konokuro(プロフ) - あひる☆さん» 1を最後まで読んで頂きありがとうございました^ - ^ 2も楽しみにしてくださいな！ (2020年3月15日 21時) (
レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
あひる☆(プロフ) - konokuroさん» 移行に行こう〜〜〜♪わーわー。。どきどきっ。。 (2020年3月15日 14時) (レス) id: 15b8e56e15 (このIDを非表示/違反報告)
konokuro(プロフ) - あひる☆さん» あひるん！！！コメントありがとうございます^ - ^ そんなこと言っていただけるなんて....！！ こちらも早め早めの投稿を心がけます！^ - ^ (2020年2月29日 1時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
konokuro(プロフ) - うさこさん» こんばんは。今回もお待たせいたしました...m(_ _)m そう思っていただけて嬉しいです^ - ^ そうなんです！複雑な感情と天気雨をかけてみました笑 晴れなの？雨なの？どっちなんだい！笑 (2020年2月29日 1時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
あひる☆(プロフ) - 複雑な心情を読ませていただきました〜〜♪はぁぁー・・よい！よいなぁ〜〜。ちねさんのきもちっ！！またまた楽しみにまっとりますぅ〜〜♪ (2020年2月28日 18時) (レス) id: f52dbdb7e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：konokuro | 作成日時：2019年6月22日 23時
