ざあざあ。 ページ17
.
その手にそっと触れると、先生の肩がぴくっと反応し、ゆっくりと上を向いた。
「....ごめんね...？...急にこんなこと言っちゃって...」
困るよね、と呟いてせっかくこっちを向いてくれたのに目を背けてしまった。
「....っもう！」
なんだか先生にイライラして、両手で先生の頬をつまんだ。
跡がつかないように、優しく柔く。
細心の注意を払って。
「....謝らないで下さい。...俺も先生と一緒に居たかった...ですから」
頬を掴む手が震えているのが分かる。
情けなすぎるだろ、俺。
しっかりしろよ、山田。
どうにも収まりそうになかったので、そっと手の力を抜いた。
。
沈黙が続く。
決して気まずいわけではない。
例えるならば、
二度寝をしたときのような。
春の陽気に身を任せて、微睡みの中へと誘われていくような。
上手く言葉に表せない。
そんな時間が俺と先生の間には流れていた。
一週間後には、待ちに待った夏休みが控えている。
恐ろしい量の課題が出されることは、予想済みだが勉強よりも遊びが優先の俺。
夏休みの間、先生と何処へ出かけたいと考えていたことをふと思い出した。
ここら辺で有名な夏のイベントは、花火大会だ。
毎年、中学の同級生と行っていたが今年は先生と行きたいと思っていた。
ずるずるとタイミングを逃して、なかなか誘えずにいたが、今がその時の気がする。
「....先生？」
「...ん？..どうした？」
とろんとした瞳で首を傾げ、柔く微笑む先生。
ああ、高校生にはちょいと刺激が強い。
「....7月の27日、って...空いてますか...？」
「...多分、空いてると思うけど...どうして..？」
緊張と先生の行動の節々で煩く鳴る心臓に、喝を入れる。
「....花火大会があって、先生となら楽しめる気がしたんです...」
目をまぁるく見開く先生。
ここ一週間の内のなかでアンケートを取ったら、俺が一番見ている自信がある。
「...へぇー！花火大会、なんてあるんだ」
「.....いいよ、行こう」
「...え..！？...一緒に行ってくれるんですか！！」
驚きのあまり、思わず立ち上がってしまった。
「....くふふふ、っははは...！」
「....何、笑ってるんですか？！...めちゃめちゃ緊張したんですからね？！」
「...だ...ふふ...だってさ..や、山田くんの...っはは..」
お腹を抱えて笑う先生。
なんだかこっちまで笑えてきてしまって、チャイムが鳴るまでずっと笑いあっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 89人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
konokuro(プロフ) - あひる☆さん» 1を最後まで読んで頂きありがとうございました^ - ^ 2も楽しみにしてくださいな！ (2020年3月15日 21時) (
レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
あひる☆(プロフ) - konokuroさん» 移行に行こう〜〜〜♪わーわー。。どきどきっ。。 (2020年3月15日 14時) (レス) id: 15b8e56e15 (このIDを非表示/違反報告)
konokuro(プロフ) - あひる☆さん» あひるん！！！コメントありがとうございます^ - ^ そんなこと言っていただけるなんて....！！ こちらも早め早めの投稿を心がけます！^ - ^ (2020年2月29日 1時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
konokuro(プロフ) - うさこさん» こんばんは。今回もお待たせいたしました...m(_ _)m そう思っていただけて嬉しいです^ - ^ そうなんです！複雑な感情と天気雨をかけてみました笑 晴れなの？雨なの？どっちなんだい！笑 (2020年2月29日 1時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
あひる☆(プロフ) - 複雑な心情を読ませていただきました〜〜♪はぁぁー・・よい！よいなぁ〜〜。ちねさんのきもちっ！！またまた楽しみにまっとりますぅ〜〜♪ (2020年2月28日 18時) (レス) id: f52dbdb7e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：konokuro | 作成日時：2019年6月22日 23時
