そわそわ。 ページ13
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情けない俺の反論のあと、知念は苦しそうな顔をして、口を開いた。
「......僕だって、涼介の気持ちを無視して告白を促してるんじゃない。性別のこととか、色々。気にしてることも分かる。....でも、でも...!このままじゃ...
涼介いつまでも先生に好きって伝えられないじゃんか!!僕、もう苦しそうに悩んでるの見てられないんだよ..」
涙声で俯きながら話す知念に驚きを隠せないとともに、俺そんなに悩んでたんだなと二人には申し訳なく思い、そんな自分に自嘲した。
誰が情けない姿は嫌いだよ。
自分が一番情けないじゃないか。
すると、今まで口を噤んでいた裕翔も真っ直ぐ俺の方を向きゆっくりと話した。
「....俺は、恋に立場なんか関係ないとか、性別なんて簡単に乗り越えられるとか、そんな無責任なことは絶対に言えない。立場というのがどうしても邪魔してくるときもあるし、性別が同じだけで苦しんだり悩んだりどうしようもないときだってあるから。」
すぅ、と息を吸って「でもね」と裕翔は続けた。
「山ちゃんはそんな中途半端に諦めない人だって知ってる。知念には敵わないけど、山ちゃんの色んなところを見てきた。だから、山ちゃんには諦めないでほしい。自分が信じた道を選んでほしいんだよ。」
あぁ、俺はなんて素晴らしい友達を持ったのだろう。
なんて、自分は惨めなんだろう。
色恋なんて自分がなんとかしていかないといけないのに、二人を迷わせて悩ませて。
二人がなんだか大人に見えて、
自分がなんだかちっぽけに見えて。
「優しいんだね」いつだか先生に言われたことが脳内でフラッシュバックする。
優しい、なんて。
そんなことないよ。
俺は先生が思ってるよりも、
優しくなんてないし、かっこよくもない。
自分のことさえ、ちゃんとできなくて、
今、二人の温かさと自分への怒りと、
先生へのどう我慢したって、どう諦めようとしたって、抑えきれない感情でぐちゃぐちゃになって、
必死に涙を堪えるように、
跡が付いてしまうくらいに強く両手を握りしめている俺なんて。
かっこよくないんだよ。
先生。
「.....俺、先生に告白してくる。ちゃんとぶつかって、....ちゃんと振られてくる。」
俯いていた顔を上げて、そう口に出せば、
二人は、笑っているのか、はたまた泣いているのか。
そんな、なんとも言い難い顔をしながら、
「うん!」と、言った。
遠くで鳴くセミが愛おしく思えた瞬間だった。
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konokuro(プロフ) - あひる☆さん» 1を最後まで読んで頂きありがとうございました^ - ^ 2も楽しみにしてくださいな! (2020年3月15日 21時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
あひる☆(プロフ) - konokuroさん» 移行に行こう〜〜〜♪わーわー。。どきどきっ。。 (2020年3月15日 14時) (レス) id: 15b8e56e15 (このIDを非表示/違反報告)
konokuro(プロフ) - あひる☆さん» あひるん!!!コメントありがとうございます^ - ^ そんなこと言っていただけるなんて....!! こちらも早め早めの投稿を心がけます!^ - ^ (2020年2月29日 1時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
konokuro(プロフ) - うさこさん» こんばんは。今回もお待たせいたしました...m(_ _)m そう思っていただけて嬉しいです^ - ^ そうなんです!複雑な感情と天気雨をかけてみました笑 晴れなの?雨なの?どっちなんだい!笑 (2020年2月29日 1時) (レス) id: 8ceddc39fa (このIDを非表示/違反報告)
あひる☆(プロフ) - 複雑な心情を読ませていただきました〜〜♪はぁぁー・・よい!よいなぁ〜〜。ちねさんのきもちっ!!またまた楽しみにまっとりますぅ〜〜♪ (2020年2月28日 18時) (レス) id: f52dbdb7e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:konokuro | 作成日時:2019年6月22日 23時