すっぴん。 ym&in

こんこん。 ページ27

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「....伊野尾先生、もしかしたら取られちゃうかもよ...？」



「.....ち、知念！何言ってるんだよ！」

俺よりも先に裕翔が知念に反論した。


「....えー？だってさぁ、転校生な上に初日でモテモテ。噂によるとムードメーカーで面白さの面でもバッチリ二重丸。更に、顔も子犬みたいな可愛い顔。
年上を落とすには、最高のタイプじゃない？」



ああ、俺には程遠いジャンルのタイプだ。


中学では割とムードメーカー、と言われる立場にあったことは自負している。


だが、高校の初日。
初めが肝心と聞いていた俺は、自己紹介でひと笑い取ろうとしたが、散々な結果になったのを覚えている。

そのときのヒンヤリとした空気は、井ノ原先生がうまくすくい取ってくれたけれど。



更に、顔。

子犬のようなプリティフェイス？

くりくりお目目に、母性本能が働いちゃう！！

なんて、モノははっきりと言って俺にはない。


もしかすると知念と似たようなタイプなのだろうか。



「そういう人に限って、あざといテクニックで相手を落としたり、可愛く見えて少し強引なところでギャップ萌え♡みたいなことするから、本気出されたら危ないかもよ？」


紙パックのジュースのストローを咥え、首をこてんとさせる、最高にあざといお前が言うか！とは思ったが、案外知念の言っていることは筋が通っていると思う。


前、姉が読んでいた少女漫画なるものを少し興味本位で読んでみたことがあるが、知念が言うような女の子が出てきていた。

でも、俺はもうフラれた人間。

先生とその有岡くんが付き合った。なんていうことになったとしても、何も俺に言う資格はないのだ。


「....まぁ、これはあくまでも僕の推測だけど。先生の魅力に有岡くんが気付いちゃった暁には、そうなるかもしれない、っていうのも頭に入れときなよ？」

と、しれっと言ったあと知念はからあげを頬張った。



。



誰かに先生が取られてしまうかもしれない。

先生が誰かのモノになってしまうかもしれない。



そんな将来がいつか来るということは、考えてはいたがこんなに早くその状態になるとは思っていなかった。



焦りと不安と。もうどうしようもないこの気持ち。



フラれたのだから、すっぱりきっぱり諦めよう。

そんな気持ちになれたらどんなに楽か。



あの眼鏡の下にある澄んだ瞳を誰かが知ってしまう日が来るのだろうか、

と考えただけで目がぼやけてしまうくらいには、
俺は先生が好きらしい。

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