あなたの番です 6 (ページ11)

今日:4 hit、昨日:8 hit、合計:15,877 hit

第161話ページ11

それから約1ヶ月、今までの事が嘘みたいに平穏に過ごした。嗚呼、ゲームが始まる前はこんなにも穏やかだったのか、、、。その間も二階堂さんは落ち込んでいたが、翔太さんのおかげで元通りまでは行かないがだいぶ傷が癒えて来ていた。具体的には一緒に鍋を食べたくらいだが。私もその1ヶ月、友達が居なくなって少しは落ち込んでいたみたいで。翔太さんに励まされてしまった。こちらは甘い物を沢山渡されたせいか、体重もちょっとだけ増えた。

　将斗さんがこちらに来るのを伝えた時は、まぁ予想通りの反応をした。管理人は「あ、うん、良いよ。分かった」とかなり軽かった。翔太さんも1ヶ月で嫌悪感は薄くなったみたいで最近ではあんまり気にしていないようだった。

「Aさん、おはよう御座います」

「あ。おはよう御座います。将斗さん」

そして今日、ついにその日になった。将斗さんは車で来た。

「すみません、待たせてしまって」

「大丈夫です。私が好きで待っていただけですから」

　車から降りた将斗さんは挨拶もそこそこに謝った。私は嫌々待っていた訳では無い、と伝える。

「そうですか。ありがとうございます」

「ありがとう、、、？、、、あ、トラック来ましたよ」

　ありがとうの意味が分からず生返事のように聞き返す。そうしているうちにトラックが見えたのでその話を切り替える。

「割と早かったですね」

「ですね」

「おはよう御座います。神谷さん、で合ってますか？」

「はい、合ってます」

「で、入れる先は」

「私の部屋です。3階の1番端、305号室でお願いします」

　トラックから降りてきた業者の人に受け答えする。40代くらいの人と新人といった感じの若い人だった。若い方はマンションを見て少し嫌そうな顔をした。まだ事件の事を引きずっているみたいだ。もう1ヶ月も経つのに。

「分かりました。じゃあ、宜しくお願いします」

　◇

「これ、ここで良いですか？」

「はい、大丈夫です」

「よっと、、、。これで、全部ですかね」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます」

「では、我々はこれで。ありがとうございました」

「少し待ってください」

　私はやる事を終えた業者の人に話しかける。呼び止められた2人は頭にハテナを浮かべて立ち止まった。若い方は若干嫌そうな顔をした。

「これ、お礼です。缶コーヒーですけど」

「お気遣いなく。これが仕事なんで」

手に持っていた物を渡そうとするとベテランの方には断られた。が、若い方は「貰っておきましょうよ。折角ですし」と嫌な顔を消して言った。