【31】崖とクモワシ、ゆで卵 ページ31
｢着いたわよ｣
飛行船に乗せられた私達が降ろされたのは、大きく二つに割れたような山の頂上の、まさにその割れ目だった。
新しく提案された課題は、なんとゆで卵。
だけど、ゆで卵を作るのにこんな所まで来る必要があるなんて絶対一筋縄ではいかないはず。
｢一体……下はどうなってるんだ？｣
谷に吹く風の音に、トードーさんが呟いた。
｢安心して、下は深ーい河よ。流れが早いから落ちたら数十km先の海までノンストップだけど｣
｢それじゃお先に｣
答えながら靴を脱いだメンチさんは、次の瞬間勢いよく谷へとダイブしていく。
思いがけない展開に、受験生から驚愕の声が上がった。
｢マフタツ山に生息するクモワシ。その卵をとりに行ったのじゃよ｣
クモワシは陸の獣から卵を守るため、谷の間に丈夫な糸を張り卵を吊す生態があるらしい。
その糸に捕まり卵を取り、岩壁をよじ登って戻ってくる……
｢よっと、この卵でゆで卵を作るのよ！｣
｢あーよかった！｣
｢こーゆーのを待ってたんだよね！｣
近くにいたゴンくん達が嬉しそうに言う。
確かにこれならハンター試験にぴったりの課題だ。
スシを作るのも楽しかったけど、やっぱり会長の言っていたようにメニューの難易度が高すぎたんだろう。
｢走るのやら民族料理よりよっぽど早くてわかりやすいぜ！｣
｢じゃあ私達も早速……！｣
｢待てA！｣
みんなと一緒に谷に向かって駆け出そうとした瞬間、クラピカに呼び止められた。
｢なに、クラピカ？｣
｢その盾を背負ったまま降りるつもりか？｣
｢忘れてた……｣
あんまり手元から離したくはないけど、流石にこのまま降りたら落下速度も上がるし、登ってくるのにも不利になってしまう。
指摘されていなかったらかなり危なかったかもしれない。
盾を安全な場所に置くまでクラピカは待っていてくれた。
｢よし、行くぞ｣
｢うん！｣
その合図と共に私達は勢いよく谷へと飛び降りた。
〜
巨大な鍋でグツグツと茹でられる卵。メンチさんはその中から二つの卵を取り出す。
｢こっちが市販の卵で、こっちがクモワシの卵。さぁ比べてみて｣
実食した卵は濃厚で、とろけるようでそれはもう美味しかった。
他の受験生からも感動の声が上がる。
｢おいしいものを発見した時の喜び！少しは味わってもらえたかしら。こちとらこれに命かけてんのよね｣
美食ハンターはやっぱり素敵な仕事だ。
……だからこそ、私には相応しくない。改めてそう思った。
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裕佐(プロフ) - にあみるまる。さん» こんばんは、コメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです〜( ; ; )ボード返信したので良ければ仲良くしてください！ (7月8日 23時) (
レス) id: 31030c7bbc (このIDを非表示/違反報告)
にあみるまる。(プロフ) - こんにちは、素敵な作品ですね。無理せずに頑張ってください、あの会話とかしたいなぁと思っていてもしよければボードでお話したいです、お返事お待ちしています。 (7月8日 21時) (レス) id: 2b8d2ab93c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：裕佐 | 作成日時：2023年6月4日 15時
