【30】飛行船と会長、やりなおし ページ30
消えた――というよりは、吹き飛ばされたという方が正確だ。
メンチさんの後ろから現れた大きな手によって、トードーさんの身体は宙を舞い、勢いのままに建物上部の窓を突き破っていった。
「ブハラ、よけいなマネしないでよ」
「だってさーオレが手ェ出さなきゃメンチ、あいつを殺ってただろ?」
「ふん、まーね」
両手に持った細長い刃物のような武器を手首で回しながらメンチさんが答えた。
「賞金首ハンター?笑わせるわ! たかが美食ハンターごときに一撃でのされちゃって」
「どのハンターを目指すとか関係ない、武芸なんてハンターやってたら嫌でも身につくのよ!あたしが知りたいのは未知のものに挑戦する気概なのよ!!」
『それにしても、合格者ゼロはちとキビしすぎやせんか?』
メンチさんが言い切った瞬間、タイミングを図ったように機械を通したような声が建物の外から聞こえた。
その場にいた全員が驚き外に出る。
上空から聞こえる音に空を見上げた先にあったのは、飛行船……?
「あれは……ハンター協会のマーク!審査委員会か!」
誰かがそう叫んだのと同時に、飛行船の底が開くと何かが中から落ちてきた。
徐々に近づいてくるとそれが人影だと分かる。
そして、重い衝撃音と共に地面に舞い降りたのは、武道着のような服に一本歯の下駄を履いたおじいさんだった。
あの高さから落ちて無事なんて只者じゃない。この人は一体……
「審査委員会のネテロ会長。ハンター試験の最高責任者よ」
「ま、責任者といってもしょせん裏方。こんな時のトラブル処理係みたいなもんじゃ。メンチくん」
「はい!」
本人はああ言ったけどあのメンチさんが緊張している。やっぱり凄い人に違いない。
「未知のものに挑戦する気概を彼らに問うた結果、全員その態度に問題ありと思ったわけかね?」
「……いえ、テスト生の料理を軽んじる発言についカッとなり、その際 料理の作り方が全員に知られてしまうトラブルが重なりまして。頭に血が昇っているうちに腹がいっぱいに……」
「つまり、自分でも審査不十分だとわかっとるわけだな? 」
「……はい」
バツが悪そうにメンチさんが頷く。
「よし!ではこうしよう。審査員は続行してもらう。そのかわり新しいテストには君にも実演という形で参加してもらう――というのでいかがかな?」
確かにそれなら受験生も合否に納得がいきやすいかも。
「そうですね、それじゃ……」
新しく出された課題は――
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裕佐(プロフ) - にあみるまる。さん» こんばんは、コメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです〜( ; ; )ボード返信したので良ければ仲良くしてください! (7月8日 23時) (レス) id: 31030c7bbc (このIDを非表示/違反報告)
にあみるまる。(プロフ) - こんにちは、素敵な作品ですね。無理せずに頑張ってください、あの会話とかしたいなぁと思っていてもしよければボードでお話したいです、お返事お待ちしています。 (7月8日 21時) (レス) id: 2b8d2ab93c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:裕佐 | 作成日時:2023年6月4日 15時