【29】運と試験官、合格者ゼロ ページ29
｢……おいしい！ 確かに細かい所には素人特有の甘さがあるわ。だけど、それを差し置いてもこの味付けのバランス、タネとそれに合わせたシャリの握り方は素晴らしいわ！！｣
｢本当ですか？！｣
おいしい、その言葉に胸が熱くなる。
｢本当よ！自信を持ちなさい、あんたセンスあるわ。……だけど、試験は私が満腹になるまでって決まり。もう終了の合図は鳴らしちゃったのよね〜｣
｢いいんです！試験に合格出来ないのは悔しいです。でも、ずっとファンだったメンチさんに私の料理をおいしいと言って貰えた。それだけで、私は凄く嬉しかったです……！｣
そもそも試験終了を分かった上でスシを食べて貰ったのは私なんだから、文句を言える立場でもない。
｢402番……あんた、名前は？｣
｢Aです！｣
｢A、今年は残念だったけどあんたならきっと良いハンターになれるわ！これに懲りずに来年も頑張りない！｣
｢はい…！｣
その後メンチさんは合格者が出なかったことを審査委員会に報告した。
だけど、何やら電話口で揉めているようで段々と機嫌が悪くなっていく。
｢こっちにも事情があんのよ、テスト生の中に料理法たまたま知ってる奴がいてさーそのバカハゲが他の連中に作り方を全部バラしちゃったのよ！｣
｢とにかく私の結論は変わらないわ！二次試験後半の料理審査、合格者はゼロよ！｣
そう宣言したメンチさんの声に会場に動揺が広がる。
｢まさか本当にこれで試験が終わりかよ｣
｢冗談じゃねーぜ……！｣
受験生の中からそんな声が聞こえた。
ドゴオォンッ！！
突如響いた大きな破壊音が会場の困惑した空気を一瞬にして破る。
そこには、無惨に壊された調理台と、その横に立つ体格の良い男がいた。
255番……確かトンパが言ってた常連でレスラーのトードーさんだったはず。
｢納得いかねェな。とてもハイ、そうですかと帰る気にはならねェな｣
｢オレが目指しているのはコックでもグルメでもねェ！ハンターだ！！しかも賞金首ハンターだぜ！美食ハンターごときに合否を決められたくねーな！｣
美食ハンターごときという言葉に腹が立つ。私が反論しようかと考えている間にメンチさんが言った。
｢それは残念だったわね｣
｢何ィ！？｣
｢今回のテストでは試験官運がなかったってことよ。また来年がんばればー？｣
｢こ…ふざけんじゃねェー！！！｣
怒りを顕にしたトードーさんがメンチさんに殴りかかっていき、次の瞬間には視界から消えていった。
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裕佐(プロフ) - にあみるまる。さん» こんばんは、コメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです〜( ; ; )ボード返信したので良ければ仲良くしてください！ (7月8日 23時) (
レス) id: 31030c7bbc (このIDを非表示/違反報告)
にあみるまる。(プロフ) - こんにちは、素敵な作品ですね。無理せずに頑張ってください、あの会話とかしたいなぁと思っていてもしよければボードでお話したいです、お返事お待ちしています。 (7月8日 21時) (レス) id: 2b8d2ab93c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：裕佐 | 作成日時：2023年6月4日 15時
