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拾参話 ページ39

蝶屋敷に戻ってきて早1週間。
ぐっすりと眠る炭治郎も、そろそろ目が覚める頃だろう。

『…ねぇ炭治郎、ここで再会した時の約束覚えてる?』

庭で善逸と伊之助に名前を教えて貰っている禰豆子を窓越しに見ながら、眠る炭治郎に静かに語りかけた。

『二人と一緒に居るって、約束、おねぇちゃん破っちゃうや』

昔よりもゴツゴツと手の皮が厚くなってしまったが、変わらない、弟の暖かな手。
握り締めると反射的になのか、握り返してくる。
それに頬が少し緩んでしまった。

『……炭治郎、見えなくても、私はずっと傍に居るからね、禰豆子を、お願いね』

昨晩に書き留めていた炭治郎と、禰豆子への手紙と、鬼殺隊全員に宛てての手紙。
それを懐から出して、ベッドサイドテーブルに置いた。

『愛してるよ、二人とも、ずっとずうっと長生きしてね』

これで最後、きっと二度と会うことも無い。
ずるい姉でごめんね、あなた達の晴れ姿も何も見れないし、何も残していけないけど。

絶対に未来だけは護るから。

流れそうな涙を堪えて、炭治郎を見つめる。
幼いなぁ、私より遥かに幼いよなぁ…。
辛い事をさせてしまった、また辛い思いをさせてしまう。
それでも、やり遂げなきゃ行けない。
私がここにいるのはきっと意味があるから。

炭治郎の手を離して、部屋を出て行く。
庭で遊んでいた三人の元に歩いて行くと、禰豆子が真っ先に駆け寄ってきた。

「ね、ねーちゃ!!」
『禰豆子』

特大級の笑顔で抱き着いてくる姿は、幼い時の禰豆子をもう一度見てるようだった。

「おうおうおう!雪女!!俺と勝負しろ!!」
『昨日もやったでしょうが、もう一回雪に埋もれさされたい?』
「ばっ、昨日は油断しただけだ!!今日は勝つ!!」

と、木刀を振りかぶってきたので足元を凍らせてそのまま伊之助を首元まで雪だるまにする。

『はい、勝負あり』
「てんめぇ!雪から出せ!!」
『後で善逸に引きずり出してもらいなさい』

ギャーギャーと喚く伊之助の隣で、私の心音を聞いてか、多少暗い善逸の表情が見えた。

「…あのさ、言いたくなかったら言わなくても良いんだけどさ、」
『…ごめんね、話すことはできないや』
「、…どうしても?」
『うん、ごめんね』

既に泣いている善逸を抱き締めて、善逸にしか聞こえない声で囁いた。

『二人を、どうかこれからもよろしくね』

無言で頷いてくれる善逸の背中をポンポンと優しく撫でて、禰豆子を預けた。

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うさぎもち - この小説めっちゃ面白いです。更新、楽しみにしてます!!! (8月6日 15時) (レス) id: 6ed501a3ba (このIDを非表示/違反報告)
- 面白かったです!これからも更新頑張ってください!(≧∇≦) (2019年11月29日 18時) (レス) id: f2a5c7d6f6 (このIDを非表示/違反報告)
あとら - めっちゃ好きです。一気に読んでしまいました!更新楽しみに待ってます!頑張ってください! (2019年10月24日 22時) (レス) id: f15d6ec153 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - とっても面白いです!続き楽しみにしてます! (2019年10月24日 19時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鏡花@狐さん | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年10月9日 12時

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