漆話 ページ21
「えぇ!折角ここまで持ってきたのに!」
『しのぶさんに怒られるのと今すぐ戻してくるの、どっちがいいの』
「戻してきます!!」
そう言って善逸君が戻ろうと廊下の角を曲がった瞬間、悲鳴が聞こえた。
「あっ」
その声を聞いて振り返ると、善逸君が金魚鉢から手を滑らせた瞬間が見えた。
考えるよりも早く地面を蹴って床をスライディングしながら金魚鉢をキャッチして壁に激突した。
腕の中の金魚鉢は無事だ。
多少水が溢れてしまってはいるものの、金魚は何事も無かったかのように泳いでいる。
「おわあああああ!?!?って、Aちゃん大丈夫?!」
「大丈夫です?立てますか?」
オロオロとする善逸君と、すぐさま私に手を差し伸べるしのぶさん。
流石咄嗟のことに慣れていらっしゃる…。
金魚鉢をしのぶさんに手渡して、私は立ち上がる。
「ごめんねぇ、俺が落としちゃったせいで…」
『ううん、大丈夫。ごめんなさいしのぶさん、驚かせてしまって…』
「いえいえ、怪我はありませんか?」
『はい、大丈夫です』
「目覚めたばかりでしょう、あまり無茶はダメですよ?それと、善逸君はお話がありますので、後で診察室まで来てくださいね?」
「は、はい…」
目に見えて怯えている善逸君がヒィィィと汚い高音を出しながら私にすがり付いてくる。
うーん、これはどの道怒られるなぁ。
『あ、しのぶさん、炭治郎を知りませんか?』
「炭治郎君なら先程、訓練所に向かわれましたよ。善逸君に案内してもらって下さい」
『そうですか、ありがとうございます!』
しのぶさんがそのまま金魚鉢を持って来た道を戻っていくのを見届けてから、善逸君に訓練所へと案内して貰う。
「あのさ、一つ聞いてもいいかな?」
『…どうかした?』
「炭治郎と双子だって、兄妹だって言ってた時に、炭治郎からも変な音がしたし、Aちゃんからは微かに嘘を着いてる音がしたんだけど、どうして?」
道すがら、真面目な顔をして聞いてくる善逸君。
あー、やっぱり聞かれるよね。
『そうだねぇ、ここだけの話にしててね?』
「え?」
『私は二人とは血が繋がってないの』
「……えぇ?!」
『まぁ言ってしまえば赤の他人だね、血の繋がりの関係性だけで言ったら』
「…ごめんね?」
『いいのいいの。私、元は捨て子だったんだよ、産まれて本当にすぐ捨てられて、だから、名前も無くて。炭治郎は私と血は繋がってないって知ってるよ、あの子、本当に鼻がいいから』
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うさぎもち - この小説めっちゃ面白いです。更新、楽しみにしてます!!! (8月6日 15時) (レス) id: 6ed501a3ba (このIDを非表示/違反報告)
月 - 面白かったです!これからも更新頑張ってください!(≧∇≦) (2019年11月29日 18時) (レス) id: f2a5c7d6f6 (このIDを非表示/違反報告)
あとら - めっちゃ好きです。一気に読んでしまいました!更新楽しみに待ってます!頑張ってください! (2019年10月24日 22時) (レス) id: f15d6ec153 (このIDを非表示/違反報告)
心(プロフ) - とっても面白いです!続き楽しみにしてます! (2019年10月24日 19時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鏡花@狐さん | 作者ホームページ:
作成日時:2019年10月9日 12時