真夏の恋は太陽に【桐嶋郁弥】 (ページ2)

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「あっつーい。
A～、ジュース買ってきて～」

友達の卯月(ｳﾂｷ)が下敷きで自分の顔を仰ぎながら、そう言った。

「なんで私なの？
卯月が行けばいいでしょー」

「この前、テストで負けたのはどっちだっけ？」

「ごめんなさい。オレンジでいい？」

「お願いしまぁ～す！」

卯月は最高の笑顔で私に手を振った。

今は七月上旬。

先週期末テストが終わり、学校は夏休みムード

教室は冷房が効いてて涼しいが、廊下はものすごく暑い。

(早く買って教室に戻ろー。)

私は、東棟と西棟を繋ぐ渡り廊下をダッシュした。

＿ドンッ！！

曲がり角で、すっごい勢いで人にぶつかった。

「痛った……」

私とぶつかった人は、私のことを睨んでいた。

「ごめんなさい！
怪我とか、大丈夫？」

上履きの色を見て、同じ学年だと認識した私は、タメ口で聞いた。

「……大丈夫だけど。
そんな勢いよく走ってきたら、危ないよ」

「あ、うん。ごめん。」

「……じゃあ。」

彼は、立ってズボンについた汚れを叩いて歩いていった。

「……あっ」

彼がさっきまで倒れていた場所に、学生証が落ちている。

《桐嶋郁弥》

顔写真付きでそう書かれていた。

(なんて読むんだろう)

クラスの男子より少し大人びている感じの彼に少し興味を持った。

「あのっ……！！」

「ん？なに」

「これ、落としたよ」

「ホントだ、ありがと」

彼は自分のポケットを確認して、学生証がないことに気づいた。

「ねぇ、なんて読むの？」

「……なにが？」

「その……なまえ」

「名前？あぁ、きりしまいくや。」

(彼にぴったりな漢字と響き。)

「桐嶋くん」

「あんたは？」

「私は、岸波A。」

私は自分の学生証を見せながら答えた。

「それで、きしなって読むんだ。珍しい」

「よく言われる、あ、ジュース買ってきてって言われたんだった。じゃあね！
ぶつかってごめんね！桐嶋くん」

「うん、ありがとう」

そう、微笑んだ桐島くんにドキッとして

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、

恋に落ちてしまった。