君を騙して。

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さっきの雰囲気など嘘の様に、レトくんとキヨは話し始める。気まずい空気になるどころか、私が会話に入れない状態だ。


やっぱり元々、二人は仲が良かったのだ。


「あ、じゃあ私の家ここだから」


自分の家に着いた。
キヨは、『そう。じゃあまた明日な！』と手を振る。レトくんも、照れながらも手を振ってくれた。少し心を開いてくれた様で、嬉しい。


□


「……レトさんさぁ、Aのこと“本気”で好きなの？」

「え」

「今まで騙してたって云うけど……ほんとはマジで好きなんじゃねぇの？」


キヨくんがそう訊く。


自分の気持ちがわからない。Aの事が好きなのか、はたまたキヨくんに取られて悔しいと思っているのか。どちらにせよ、キヨくんに嫉妬心を抱いているのには変わりないが。

けれど、ふと思った。別にキヨくんに嫉妬心を抱く必要もないんじゃないかと。


A以外に可愛い女の子なんていっぱいいる。次の子をターゲットにすればいい。もうAは捨てたはずだ、あっちが勝手にくっ付いてくるだけ。

それなのに、なぜか一緒にいようと思う。
それなのに、何故か離したくないと思う。
キヨくんにAの事で嫉妬してしまう。


いや、違う。この気持ちは恋じゃない。



×××

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