君を騙して。

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「レトくん！」


後ろから声を掛けられる。この声は、Aだろうか。

振り返ってみると、そばにはキヨ君もいた。キヨ君は、いつもの怒っている顔ではなく、すっきりした顔でこちらを見つめている。

何かがおかしい、俺の勘がそう告げていた。


「どうしたの？ キヨ君も」

「Aは“ある事”を確認しにきたんだとよ」


キヨ君がそう呟いた。ある事を、確認しにきた……それはもしかして、俺の計画？

Aにバレたっていうのか。それを予想した時、ずきりと心が痛んだ。


「……ある事？」

「あぁ。……A、言える？」

「……うん。レトくん、今朝ね、クラスの女子達が話してたの。『学校中の女子、全員抱いた』って。もし全員じゃなくても、多くの女の子を抱いてるんじゃないの？」


Aのその目は、冷たかった。

もう、あの笑顔を見せてはくれない。俺のことを最低な奴だと言ってそのまま俺の前から姿を消すだろう。


「まぁ確かに、女子は数人抱いたね。」

「っ！」

「その数人に、Aも含まれてるよ？」


そう言うと、Aの表情が強張っていくのが分かった。もう止められない。

噂を否定すればよかった。けど、もう『この計画』のために一緒にいるのは、嫌になった。

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