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「んふ、いのおちゃんはさぁ、家でごはん作らねぇの〜?」
「んー、こないだパスタ作ったよ…って山田酔いすぎじゃない?そんなに弱かったっけ」


アルコール度数の低いお酒を頼んだはずの山田は1杯しか飲んでいないのに、もうべろんべろんだ。
顔を紅潮させてとろんとした瞳で俺の事を見つめてるもんだから、俺の心臓と俺の俺はノックアウト寸前。
ここが居酒屋じゃなかったら確実に襲ってたと思う。
いや、いくら間違えたとしてもメンバーを襲う訳には行かないしなにより俺は女の子が好き。
山田は恋愛的には好きじゃない。決して。


「んぇ、いのおちゃんごはん作れんのぉ?すげ〜大貴とは大違いだな〜」
「俺もちゃんと自炊くらいしますぅ〜!」
「ふぅーん、いのおちゃんがもしごはんが作れなかったらおれが作りにいったのになぁ」
「………えっ?」


いきなりの爆弾発言に思わず声が上擦る。
山田の手料理を食べられるならご飯を作れるなんてそんな技今すぐ捨てる。
ポケモンで言う1 2の……ポカン!だ。
驚いて山田の方を見れば、うとうとと眠そうに頭を揺らす彼。
いや、酔っ払いの言うことなんて信じちゃいけない。
昔酔いに酔いまくった薮が珍しく奢ってくれるなんて言うもんだからごまをスりながら2軒目を付き合ったのにお会計の時にはそんなことをすっかり忘れて、「何言ってんだ、割り勘に決まってんだろ」と何故か俺が怒られたことがある。
それくらい酔っ払いは意味がわからないし俺が理不尽な目に遭う。
今のはきっと、酔った山田の口から滑り出た思いもしていない一言だろう。




「ねーぇいのおちゃん。おれのこときらぁい?」
「んぇっ、」


とろんとした瞳でまたそんな爆弾のような質問をぶつけてきた山田に、俺は硬直する。
口の中に含んでいた米が、噛み潰された状態で静止した。
口をもぐもぐさせる働きさえ、俺にはなくなってしまった。そんな高校の時に学んだかの有名な著者が執筆した小説の一部分が、場面は違えど今ここで再生される。
俺は私。山田はK。なんてそんな馬鹿なことを言っている場合じゃない。
お酒が回っているはずの俺の頭が急に冷静になる。
手元にあるグラスに手を近づけて、一気に米と共に流す。
相変わらず俺を見つめている山田の顔を見て、いつだかこいつが言っていた言葉を頭の中で再生させた。


そう、もうバカになっちゃえ。









「おれ、山田のことすきぃ〜!!」

こんなことを言ってしまったのを後で後悔するなんて知らずに。

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作者名:夢雨 | 作成日時:2020年3月19日 2時

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